+++アンニュイ+++

□夢を見ている。
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ふと触れられた手の冷たさに驚くよりも先に、腕が絡みついてきて、夢でも見ているのかと思った。
覚めないでほしいと思うよりも先に反射的に無情にも押し上げられた瞼の向こうにありえない光景を見る。


何で君がこんなことをしているの。


+++夢を見ている。+++


しばらく会っていなかった。
誰にって、土方にだ。
相変わらず仕事も無いが、あっちは多忙極まりないらしく、一度痺れを切らして会いに行ったら吸殻の山と書類の山に埋もれて、酷い顔でしばらく来るなと頼まれた。

そう、頼まれてしまったのだ。

いつもは怒鳴るとか、蹴りだされるというのに、頼まれてしまった。

それだけ体力が限界ギリギリで、精神力だけで仕事をしているのだとわかったから、大人しく帰ってきて、今に至る。

もう二日すれば片がつくと言っていたし、本当なら無理矢理眠らせたかったのだけれどあんなふうに懇願されたら黙るしかなかった。
何でそんな酷いことになっているの、と聞いたらもうしばらく後に地球にやってくる天人の警備計画と、先日起こった事件の報告書やら始末書の提出期限が重なった、と、目の下に大きな隈を作ってそう答えた。
手伝ってやろうか、といったら手間が増えるだけだと少し笑って答える。

そうとう参っているらしかったけれど、これ以上負担になるのはまずかろう―――。

そういうやりとりがあったのだった。
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