+++アンニュイ+++
□白い月、負け犬
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―――声がする。
夜半に白い布団の上で目を覚ます。
冴え冴えとした月が出ている。
障子に出来た陰影に外の天気を知った。
夜中の快晴。
意味のない空。
きり、と脳の中心をねじられるような微弱な痛覚が突き抜けていく。
―――誰の、声だろう。
何を言ってるのかは分からない。
ゆるく布団の上、上体を起こしこめかみを押さえる。
とくとく、と眠っていたわりには幾分早い脈拍が指の腹に伝わる。
夢を見ていたのだったか。―――何の、夢を見ていたのだろう。
―――自分を呼ぶ声が聞こえる。
頭の中で脈動が反響して、頭蓋に跳ね返っては戻ってくる。
喉が渇いて舌が張り付いている。
何か叫びだしたいような衝動が突然突き上げてきたけれど、何を叫んでいいかも分からない。
目蓋の下の暗褐色の闇の中。
無理矢理押し上げた後はひやりとした冬の気配が眼球を撫でて乾かしただけだった。
頭と体がちぐはぐになったような感覚。
それはまだ体が眠っているからだろうか。
矢張り先刻まで何か夢を見ていたのだ。でなければどうしてこんな、脳の奥などに熱が溜まって叫んでいる。