+++アンニュイ+++

□花街夜話
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+++花街夜話+++


山崎が攘夷志士の情報を掴んだのは一昨日のことだった。

認知されていないいわゆる岡場所で日々会合を繰り返しているらしい。
実際に話をしているのは三人だったけれど、組織的な関連をうかがわせるようにいくつか書簡を持っていることが確認されている。
ただ相手が慎重なものだから隣部屋に陣取っても薄い壁だというのに確かな話も聞こえてこないし、その話も暗喩ばかりで目的も未だはっきりとしない。盗聴器を仕掛けても引っかからないのは初めてだった。

証拠が無ければ捕縛は出来ない。

今の時代、遊郭は禁止されているものの真選組に風俗取締り名義の捜査権は無い。
あくまでも真選組は対テロ用の特殊部隊なのだ。
かといって明確に武器を用意しているなどという証拠は相手もさるもので尻尾を掴ませようとはしない。

証拠が足りない。
だが放置しておくわけにもいかない。
うまくいけば芋づる式の検挙が可能になるかもしれない、だから。

潜入捜査―――

そういう話になったのである。

それまでは別に土方も異を唱えるつもりはない。
大量検挙を狙って泳がせておくにしても確証を掴んでいつでも検挙できる状態にしておきたい。
危険は伴うが、今までに無かった話でもない。
確実性の面からも潜入捜査を認証したのは土方自身だった。

だが、それを自分自身が行なうことになるとは、思ってもみなかっただけで。
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