+++アンニュイ 弐+++

□かわいいひと。
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それほどまで大変な状況だというのに、本人にまったく自覚が無いのがいけない。

倒れるか倒れないかというときだって身体が少し重い程度の認識があるだけで、気がついたら倒れていた、という危険極まりないことになっている。
だから冬の間は、土方から目を離してはいけない、というのが入り浸る四人の共通認識になった。一度調理中に、包丁を握ったままも倒れそうになったときは、流石の高杉も魂が抜けるかと思ったほどである。

そんな体質でよく近藤たちが私宅に帰すものだ。

だが気温が上がり始め、滅多に十度をしたまわる日がなくなり、ようやく冬中続いた緊急体制(というほどのものでもなかったが)も終わりを告げた。

湯たんぽ代わりももう少しでお終いか、と思うと少々名残惜しく……ついうっかりと目覚まし時計(二個目)をとめてしまう高杉である。

「…ん…」

もぞ、と最初のピ、が鳴った瞬間とまってしまった目覚ましを疑問に思ったのか、しっかりと腕の中抱き込んで眠った土方が小さく身じろぎする。
この時間にうっすらとでも目蓋を開けておかないと定時に出勤できない(上に途中の路上でうっかり眠りかける)というからものすごい低血圧である。
どうしてあれだけ脂肪分を取っておきながら、血圧が一向に上がらないのか高杉には不思議で仕方がない。その上土方は喫煙までしているのだ。血管は細いと決まっているのに。

「もう一寸寝てろよ」

じたじたと弱弱しく抵抗する身体を抱きながら、髪を梳いてやると少し土方は大人しくなった。
目もほとんど開いていない。この時間の土方は本能に忠実なため、大きい確率で睡魔に従う。

んー、と不明瞭な声を上げたかと思うと、土方はくし、といきなり小さくくしゃみをした。
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