+++アンニュイ 弐+++

□花盗人
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最近、妙なのに懐かれるようになった。

そう土方が呟いたのは、江戸城へ向かう途中の車中だった。
今日は城で警備会議があるらしい。らしい、というのは、土方が説明していたような気がするが例によって右から左へとおきたが聞き流していたせいである。運転手兼補佐としてハンドルを握る沖田は、へぇそうですかィ、といつものやる気の無い顔で返事をした。

「何だよその返事」
「あんたが言い寄られるなんていつものことでしょうが」
「言い寄られるって何だ」
「…そいつらも報われませんや」

気が付いていない土方はいつものことで、沖田は盛大な溜息をつくのである。
仕事に対してはいくらでも頭が回るというのに、何故自分のことになるとこれ程に無関心になるのか、沖田には分からない。そのいっそ無防備な格好がノーガード戦法といえるのか、それとも沖田たちの必死の妨害のおかげか、放っておいたら直ぐに言寄られたり知らない内に貢がれたりしている土方を守るのは大変である。

「で、一体誰なんですかィ、そのニブチンに言寄るつわものは」
「ニブチンって何だ!大体言寄られてるわけじゃねェだろ!…花貰ってるだけだし」
「…それを言寄られてんだと思いやすぜ」

しかし土方に花とは、中々やるものである。
高い貴金属は受け取らないし、かといって酒に誘うのも土方が多忙だと分かっている。花くらいなら断るまでもないからだろう。ひょっとしてこのところ土方の執務室に飾ってある花は、その男が渡しているのかもしれぬ。
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