+++アンニュイ 弐+++
□蝶と、蜘蛛(第二部)
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他の誰がどうなったって、貴方たちだけが生きていてくれればそれで良かった。
この手はそんなに沢山のものを守ることは出来ない。
肌になじんだ空気。
暖かい手のひら。
さざめくような穏やかさ。
それが守れるなら、後はどうでも良かったんだ。
自分のことなんて忘れてくれていいから、生きていて欲しかった。貴方たちには、貴方には、生きていて欲しかった。
それだけで良かった。
よかったんだよ。
だって貴方だけが俺そこから出してくれた。絡まった白い網の中から出してくれた。
――――――そこから逃してもらった俺は、もう蝶でなくなってしまっていたけれど。