+++アンニュイ 弐+++
□わんこと副長の日常
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わんこの一日は、副長に始まり副長で終わるということは、屯所の誰もが知っていることであった。
それに時折天才剣士が乱入することを除けば、真選組屯所においてはそこそこに微笑ましく、そしてそこそこに危険な日々が繰り広げられているのである。
+++わんこと副長の日常+++
土方に爽やかな朝というものは訪れない。
それは彼がひどい低血圧であるせいもあるのだが、大半はいつの間にか横で持参した枕に頭を乗せてすいよすいよと気持ちよさそうに眠っている男のせいであるというのが本当のところである。
朝方鳴った目覚まし時計(時間差攻撃設定)を叩き壊さんばかりの勢いで黙らせて、ようやくそのたっぷり三十分後にのそりと起き上がった鬼副長はまさに鬼と言って良いほどの形相である。まさしく不機嫌という文字を実体化すると寝起きの土方になるに違いない。ぎらぎらとした目は意識が半分ほどはっきりしていないというのに、いやだからこそか、半目になっていて近づくだけでも恐ろしい。
もぞもぞと動いた土方に気が付いたのか、横の布団の盛り上がりが動き、ひょこんと顔を出した青年は土方よりも幾分すっきりとした顔で挨拶した。
「おはようございます、土方さ――――――」
ん、とまで言われぬうちに、その頭を五本のほっそりとした指がひっつかんで、障子ごと青年の体は庭先に放り投げられていた。