+++アンニュイ 弐+++

□僕の子供産んでください
1ページ/14ページ

一斉に頭を下げられて、驚くより先に土方は逃げの体勢に入った。
敵前逃亡は士道不覚悟、切腹だといつもの自分なら言ったであろう行動だが、この場合自分は非番だしそうなるとこの四人をひっつかまえる義務は無いのでそのあたりのことは無視することにした。

「頼む」

お前そんなことできるような性格だったか。
それはもう深々と腰を折って頭を下げている男が謝ったり頼んだりしているところを基本的に土方は見たことが無い。しかもこんなしっかりと腰を直角になっているのではないかというほど折り曲げているところなんか一生見られるとは思ってもいなかった。何しろ頼む前に命令しているような男なのだ。謝る前に誤魔化す男でもある。四人のうちの三人はそういうケがあるが、この男が一番酷い。けれど唯一そのあたりがまともな長髪の男も同じようにがっちりと頭を下げているので土方は視線をあちこちに落ち着き無く彷徨わせて、

「…考えさせてくれ」

ようようそれを言うだけで精一杯だった。



+++僕の子供産んでください+++



しかし、待ってくれ考えさせてくれといっても、何を考えたらいいのだろうか。
土方は頭を抱えていた。
子供を産んでくれ。
そう言われてから、数日の間ずっとそればかりが頭の中をぐるぐると回って仕事が手に付かない。
それにしたって一体どういう神経をしているのか、なんてあの男たちがらみで考えるのはとうに諦めた。プロポーズにしたって今時そんな言葉はナイ。それは分かっている。自分たちはそういう関係では、多分無い。あの男たちがどう思っているかは分からないが。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ