tobita.book
□花香る
1ページ/2ページ
「小十郎!こいつぁ何だ?」
政宗が指差した先、橙色の小さな花が目一杯に咲いている樹。
きんもくせい【金木犀】
もくせい科の常緑高木。秋、香りの高い赤黄色の小さい花を開く。
「I see… あぁ、いい香りだ…だが、ちと甘すぎるか…」
「今だけですよ。すぐ花も落ち、匂いも薄くなります。」
「そうか…」
伸ばした指をすっと戻す。
それだけで落ちる花
「Ha!俺には合わねぇ花だ。行くぜ、小十郎。此処は冷える…。」
「承知しました。政宗さま。」
ほんの一瞬、主が儚げに何かに向けて笑ったのを視界に捉えた気がした