tobita.book

□花香る
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「小十郎!こいつぁ何だ?」

政宗が指差した先、橙色の小さな花が目一杯に咲いている樹。


きんもくせい【金木犀】
もくせい科の常緑高木。秋、香りの高い赤黄色の小さい花を開く。

「I see… あぁ、いい香りだ…だが、ちと甘すぎるか…」

「今だけですよ。すぐ花も落ち、匂いも薄くなります。」

「そうか…」


伸ばした指をすっと戻す。

それだけで落ちる花


「Ha!俺には合わねぇ花だ。行くぜ、小十郎。此処は冷える…。」

「承知しました。政宗さま。」


ほんの一瞬、主が儚げに何かに向けて笑ったのを視界に捉えた気がした
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