tobita.book
□休日
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「おーい、皆本!」
「ん?なんだ、賢木か…。何のようだ?」
後ろから呼び止められて振り向くと、白衣を着た賢木が片手をちょいと上げて近寄ってきた。
相変わらず軽薄そうな見かけどうり、中身も軽薄だが、これでもLevel6のサイコメトラーだ。本当は優秀な医者でもあるのだが、この性格のせいでちょくちょく忘れられている。本人は気が付いていないようだが…
「なぁ、皆本。お前、ちょっと俺に冷たいんじゃないの?」
「そうか…?それで、用件はなんだ?わざわざ、それを言う為だけに呼んだワケじゃないんだろう?」
さも忙しいですと言わんばかりの皆本だが、それを気にする賢木でもない。
こんなやりとりを、この二人は学生時代から続けている。
「いや今度の休み、ウチに来ねぇか?確かお嬢ちゃん達は家に帰るんだろ?だったら…」
「なんだ、賢木。この前言ってた女性にもうフラれたのか?」
「ひどっ!てか、違うから!」
「違うのか?」
「違います!」
そうかと言って首を少し傾ける皆本を、今まで何度見てきただろうか。皆本も長身の部類ではあるが、賢木の方が少し高いので、今まで何度もその仕草を上から見ていた。皆本も少し上向きで首を傾げている。
「別にたいした用でもないんだがな…。たまにはお前の作った肴で酒が飲みたいと思うんだよ。」
「…そうなのか?」
皆本の小さな気持ちの揺れが賢木に流れ込んでくる。
「分かったよ。じゃあ、何か食べたいのがあるなら用意するから、早めに言ってくれよ?」
「あぁ、楽しみにしてる。」
「大袈裟だな。じゃあ、後で…」
遠ざかっていく皆本を見送りながら、賢木は小さく呟いていた。
「楽しみにしてるよ、本当に…」
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