パエリア
□いつだって君は3%
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──君が来てくれる確率
──君が笑ってくれる確率
──君が喜んでくれる確率
──君が……
どうしていつもこうなるんだ、とボクは頭を抱えてしまう。
約束をしていた日、ボクは彼女に手料理を振る舞い、美味しい紅茶とお菓子を食べて、最後はキッスに乗って空の散歩、そして今日こそはプロポーズ!!
ボクの占いでも『成功する』と出たのに、彼女──撫子ちゃんは不機嫌だ。
そう、いつもこうなんだ。
撫子ちゃんは気まぐれでも気分屋でも無いのに、ボクの97%当たる占いは彼女にだけは通用しない。
いつもいつも、彼女は3%、外れる方の道へ行ってしまう。
「……」
「……」
どうするのが正解かなんて分からないし、とりあえずは2人で紅茶を嗜んでいる。
甘い香りの茶葉「クッキー」は、撫子ちゃんに似合うと思った。正にその通りなんだけど、今はなんだか違う…敢えて例えるとすれば、爽やかだが人を選んでしまうミントティーだ。
撫子ちゃんは機嫌が悪い。
端から見ても理解できるだろう、だが何故機嫌が悪いのかが分かる人間がいるなら、女の子じゃなければポイズンドレッシングをしているね、うん。
「ココさん」
「ん?」
数十分ぶりに撫子ちゃんが口を開いた。目の前のサブレは一枚も減っていない。もちろん、撫子ちゃんの好きなチョコレートだって無くなっていない。
「不公平です、これは」
「は?」
むすっとしているのは分かる、分かるんだけど……不公平って言った?
何が??
「不公平ですよ。
料理は美味しいし、紅茶も美味しいし、お菓子は私が好きな高いのわざわざ用意して、至れり尽くせりどころじゃないですよ、至れり尽くしすぎです!!」
「・・・・・・??」
「私ばっかりなんてズルいです、こんなの不公平ですよ!
私だって、ココさんにいっぱいいろいろしてあげたいのにっ! ココさんが喜んでくれることしたいのにぃ!!」
「そ、そんなことだったの、不機嫌の理由って!!?」
「そんなこと、なんかじゃないです!
ココさんちっとも分かってません、これは重要なんですよっ!?」
重要、と言われても…ボクとしては、撫子ちゃんが傍にいてくれるだけで幸せだからもう既に至れり尽くせりなんだけど……;
そう思っていたら、撫子ちゃんはキッとボクを睨んだ。うん、かわいい。
「嬉しく無いです、こういうの!!」
「!!」
刹那、撫子ちゃんから出た言葉にボクはショックを受ける。
喜んで欲しくて、笑って欲しくてしたことだったけど、今回も撫子ちゃんは思った反応はしてくれない。一体どうしたら良いんだ、何が足りないんだろう…?;
「…」
「…」
「……」
「……」
「…ココさん今、どうして私が喜ばないんだろうって考えてるでしょ?」
「!」
「あたり。
ココさん、ほんっとーに分かんないんですかっ?」
「…」
……、分からない、よ。
君の考えが分からない。
大切な君の、大好きな君の考えは、いつもボクとは違うから。
「撫子ちゃんはいつも、何を考えているの?」
とうとうボクの口から出た言葉。いつも思っていたけれど、決して言わなかった言葉が出た瞬間、撫子ちゃんはにこっと笑った。
「もちろん、ココさんのことですよ。
ココさん今日はどうしてるかな、笑ってるかな、キッスとどこかに行ってるのかな、占いのお仕事はどうだろう、ココさんは…今日も幸せかな?
一日中、こんなことばっかりですよ」
ボクの占いでは彼女の行動予測が出来るけど、彼女が答えたような答えが出た試しは無い。でも、嘘では無さそうだし……
「ココさん」
「…うん?」
「ココさんのことは大好きですよ。でも、ココさんはいっつも先を行くの、対等じゃないの。
私は、ココさんと対等な立場で笑い合いたいんです。それはダメですか?」
「撫子ちゃん…」
「いっぱい用意してもらっても、私が1に対してココさんが100なんてイヤなんです。2人でいっしょが良いんです」
そんな言葉が来るなんて、ボクはまるで予想もしていなかった。
紅茶はすっかりぬるくなった。相変わらずサブレもチョコレートもちっとも減っていない。けど確実に増えたものと減ったものとがある。
いつだって君は3%
君への愛情は確かに増えた。
君への信頼も格段に増えた。
減ったとすれば、君からのボクの信用。
この信用を勝ち得る為には、そうだね。
「撫子ちゃん」
「…なんですか」
むくれている君に、微笑んで
「ボクと対等に、なってくれる?」
「当たり前ですよっ!」
ふくれているほっぺに手をのばす
「じゃあ、ボクと結婚してくれるかな?」
「!!?////」
君は、キスを、拒まない