パエリア

□BLUE×BLUE
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すき
好き
大好き
なのに…届かないよ
いつになったら見てくれる?
ねぇ……









「かんだっ」

「………チッ…」


ちくり

また。
神田はあたしを見たら舌打ちする。



「コムイさんが呼んでたよ。見掛けたら伝えてって言われたから」

「…ふん」

「そ、それじゃあねっ」



ぎこちなく笑って、横を通る。
神田の纏まって綺麗な髪が少しあたしの動きに合わせてなびいた。
セミロングのウェーブが邪魔だと前に言われて、肩までに切りそろえている。
高い声が五月蝿いと言われて、神田が居る時は必要なこと以外あまり話さないようにする。
ほんのりしてるメイクが臭うと言われて、控え目の化粧品に変えた。

やっと気付いた。
神田に嫌われてるんだ。



(ごめんなさい、あたしは好きなの)



一目見た時から。
厳しくて、強くて、本当は優しいあなたが。
でも、嫌われてるから──






























「撫子ちゃん、ありがとねー神田くん呼んでくれて」

「…いえ」

「……大丈夫?」

「? 大丈夫、です、よ??」


 

ぎこちなく、つくりわらい。



「室長」

「ん?」

「あたしと、神田とを組ませないで」

「え…?」

「ほ、ほら…あたし、神田に嫌われてるみたいだし…」

「撫子ちゃん…?」

「…ごめんなさい」









「……行っちゃったけど良いのかい、神田君」

「…………」

「見事に勘違いしてるけど、君が招いた結果だよ?」

「……チッ…」

「言葉はね神田君。必要だからあるんだよ。与えられたんだから」













嫌われて
離れて
去っていくから




「っ…おい!」

「…」


神田の声。あたしは振り向かない。だって多分あたしじゃ無いもん。



「おい、無視すんなっ!」



…え?
あた、し??
肩をつかまれ、動きが止まる。




「…痛い」

「っ、わ、りぃ…」



ぱっと離される。



「…なに?」

「任務、お前もだ」

「……行かない」

「はぁ?」

「…調子、悪いのよ」



それだけ言って、自分の部屋に入る。鍵をかけようとしたら、何か聞こえた。気がしただけみたい。


 





「ぁ……っ、クソっ」



閉まる扉は心
コムイに言われて気がついた
俺はあいつが…撫子が好きなんだ…なのに、酷いことばっか言って。
髪も声も好きなのに、撫子は俺の言葉によって、その全てを変えた。
余計に、イラついた。



「…」



何の音もしない、扉の向こう。
この扉を開ける権利は、無い。

…行こう。
もう届かない俺の恋心。




全てが青くなる

全部、ダメになっちゃった

悲しい色

青くなった世界

決して涙は見せなかった

泣いてしまえれば楽なのに

俺はごめんも言えないで

あたしの好きはもうイラナイ






さよなら空に
永遠に


BLUE×BLUE







Fin...
 

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