パエリア
□相互相違、キミに愛を。
4ページ/26ページ
「紅茶いれますから、撫子さんはソファーでくつろいでいてください」
「えー、ココの部屋がいいなぁ。眠いし」
「やめてください;」
けちー、と言う言葉を受けつつもマントをはずし、キッチンに向かう。
撫子さんは昔、「庭」時代にともに過ごした人だったりする。
あの人は、総てが「相変わらず」だ。
撫子さんの好きな紅茶、クッキーを淹れて…ああドーナツムリのドーナツがあったよな。それにしよう。
「撫子さん、紅茶………」
「…えへっ」
「撫子さん、何やってるんですか!!」
「部屋には無いだろうから、ソファーの下とか本棚や薬棚の間にオトコノコの本が隠れてるかなぁって」
「ありませんってば…勘弁してください;」
「やっだよーん」
まったく…この人は。
──ガアァ、ヴァァ
「…キッス?」
「あ、忘れてた」
「え? 撫子さん?」
「この為にここに来たんだった。ほらココ、こっちよっ!」
「は? ちょ、撫子さんっ?」
パタパタと撫子さんはボクの手をひいて外に連れ出した。
キッスのところに行くと、そこには見たことも無い生物が横たわっていた。
「こ、これは…」
「名付けて『スイーツリュウ』かな。鱗や爪はあまくって、お肉はとろっとろ!
…んふふ〜」
「……こういうのはトリコやサニーに任せたほうが…」
「2人には去年会ったから、やだ♪」
「…ボクも目立つのは嫌いなんですが;」
「そうね。だから、どうするかは任せる。あなたが行ってくれても良いし、彼らに任せても構わないわ」
「……」
新しい生き物・食材は発見したなら報告の義務がある。が、彼女は何があってもそれをしない。それもそのはず、彼女は「IGO」から逃げ回っているのだ。
「分かりました、トリコに連絡しておきますから…で、期限は?」
「多分、あさってまで」
「…迎えに行ったほうがはやそうですね」
「そこは任せるわ。ただ報告は3日以内にしないと、本気で鱗と爪以外が食べられなくなっちゃうから」
「わかりました…で、今日はどうされるんですか?」
まぁ、分かるけど。一応聞かないと。
「泊・め・て・♪」
「………はぁ…はい、撫子さん」
「ありがと、ココっ」
「…」
そんな風に、嬉しそうに笑わないでくださいよ撫子さん。
今夜はまた、眠れなさそうだ。