連載

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有り得ないことがこの身に起こるなんて。


++girl panic!・1++


「やっぱり、胡散臭いなー」
ミーは小さなガラス瓶に入っている、桃色の液体を見つめながら呟いた。
これは、今日敵のアジトから押収した物品の中にあったものなのだが、非常に面白そうなのでスクアーロ作戦隊長に提出せずに、自分のポケットにこっそりとしまってきたのだ。
「肉体が女性に変化する薬」。この小瓶が入っていた箱に書かれていた名前だ。
身体が女性になるなんて、有り得ないことだ。
それが、このわけの分からない液体で叶うなら――。
「ちょっとのことじゃ動じないセンパイを、吃驚させられるかも」
ミーは、どうやってこの怪しい液体をセンパイに飲ませるか、それはもう楽しく考え始めたのだった。

+ + + + +

翌日。
ミーは、センパイにおやつを作ってあげることにした。
ベタだが、ホットケーキにするつもりだ。
そして、その中にあの薬を混ぜ込む。
「うん、バッチリだ」
「何がバッチリなんだよ?」
「――わっ、ベルセンパイ!」
「今何隠したんだよ、見せてみろ」
ミーは慌てて小瓶を後ろ手で隠したのだが、センパイに呆気なく見付かってしまった。
仕方なく、その小瓶をセンパイに差し出す。
「何、これ?」
「……秘密です」
「明らかに、ホットケーキのタネの中に入れようとしてたよな?オレにそれを食わせるつもりだったんだよ……な!」
センパイは素早い動きでキャップを外し、あろうことかその小瓶の口をミーの口に突っ込んできた。
強引に小瓶を傾けて、中身をミーの口の中へ流し込む。
「んーっ、んーっっ!」
「ほら、ちゃんと飲めよ」
小瓶をミーの口から外し、顎を下から押さえて口が開かないようにし、ミーが液体を飲み込むのを待つ。
もう、飲むしかない。
泣きたい気持ちと不安な気持ちで、ミーはそのうっすらと甘い液体を喉へと流し込んだ。
すると。
――シュウゥゥゥ……。
「うわっ、何だよ!?」
突如、ミーの身体は桃色の煙に包まれた。
身体が、焼けるように熱い。
「センパ……、身体、熱い……っ!」
「おい、フランっ!どうしたんだよ!」
「分からな……うあぁぁぁぁ!!」
身体中のタンパク質が、熱で溶けてしまうのではないかと思われる程の熱さに襲われたミーは、そこでフツリと意識を失った……。

目を覚ますと、ミーは自室のソファーの上に寝かされていた。
あんなに苦しい思いをしたのに、特に変わった様子は見られない。
「起きたか」
「はいー……。なんか倒れちゃったみたいで、すみませんでした」
「気にすんな。それよかお前、どーなってっか分かんないの?」
「え?何がですか?」
センパイの言わんとしていることが分からずに、ミーはきょとんとする。
そんなミーのことを起き上がらせて、センパイは自分の膝の上にミーを座らせた。
そして、セーターの上から胸を触られる。
「ちょっ、やめて下さいってば」
「お前、これでも気付かないの?」
「……は?」
「胸。ちょーふわっふわしてっけど」
「え?」
センパイの謎の発言に、恥ずかしさを追いやって自分の胸元を見下ろしてみた。
見えたのは、膨らみを柔らかく揉みしだくセンパイの手。
……膨らみ?
「えっ」
ミーはセンパイの膝の上から飛び退き、走って鏡台の前に行った。
そこに映っていたのは――。
「これ、ミー……?」
ミーの顔をした、一人の女の子だった。

To be continued.
2010.01.24

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