僕等はここにいる
□『さぁ、ちゃんと理解できたかな?』
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その後ろ姿を見つけたのは、四角い庭の中だった。
アイツが今バチカルにいるのは知っていた。
しかし、会う気なんてさらさらなかった。
ただ、用があってファブレの屋敷の近くを通った時。
アイツの、レプリカの声が聞こえた気がした。
それがどうしても気になってしまい、仕方なしに様子を見にいった。
アイツをそこで見つけたのは偶然だ。
だが…、違和感があった。
「え〜っと、何日ぶりだ?」
「一週間ですの!」
「そうかそうか、とりあえず声がデケェ」
「みゅ〜;」
夜の闇の中でも目立つ朱色の髪のアイツとその手に押しつぶされている青い獣。
「ま、だいぶ落ち着いたかな。シェリダンの惨劇でぶり返した時はどうしたもんかと思ったけど」
「あの時のご主人様、毎日泣いてたですの」
「今はもう大丈夫だろうから、心配ない」
会話の内容もそうだが、ヤツの纏う雰囲気に感じる違和感。
一体なんだ?
と、そこでヤツがこっちに振り向いて目が合った。
一瞬驚いた表情をしたがそれはすぐに自嘲的な笑みに変わった。
ヤツはこんな笑い方をしただろうか。
「…よぉ、被験者」
……違う。
アイツは俺を『被験者』とは呼ばない。
「こんな夜中になんか用か?それとも“ルーク”が呼んだかな?」
「テメェ、誰だ?」
ヤツは笑顔のまま応える。
「誰、ねぇ〜。一応“アーク”っつう名前はあるけど。な、ミュウ」
「はいですの」
ヤツは手の上で返事をする青いのを軽くつつく。
コイツはあの屑じゃねぇ。
じゃあアイツは?
「…っ!何者だテメェ、レプリカはどうした!?」
「夜中に大声出すなよ。それから“ルーク”ならぐっすり眠ってるぜ?」
ここでな、と言ってヤツは胸の辺りを指し示した。
混乱した頭ではどうにも理解できない。
といっても、ここで頭が正常に働いていたとしても理解できたとは思えなかったが。
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