僕等はここにいる
□『さぁ、ちゃんと理解できたかな?』
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何も言えずにいると青いのが言った。
「アークさんはご主人様が怖い夢を見ないようにしてくれてるんですの!」
「見せてんのも俺だけどな」
青いのはどこか誇らしげだ。
対してヤツは自嘲的な笑みのまま。
しかしそこで何か思いだしたような顔になる。
「そういやぁ、お前に言っとくことがあるんだった」
そう言いながら青いのを肩に乗せこっちに歩み寄ってくる。
ゆっくりとはいえさほど離れてはいなかったはずなのに、それはとても長く感じた。
俺は何故かヤツから視線を外せず、動けなかった。
そして目の前までやってきたヤツと目が合う。
その目に、暗く深い何かを見た気がした。
ヤツが口を開く。
「自分のレプリカの不甲斐なさを恥じてるなら、罵るのは俺にしとけ。“ルーク”に言うのはお門違いだ」
「?!」
混乱が混乱を招く。
思わず固まってしまった俺にヤツは満足そうなーーー常にあった自嘲を感じさせないーーー笑みを浮かべて背を向ける。
自分に興味をなくしたのか。
しかし少し歩いた所でまた立ち止まる。
「ああ、それから。『何者だ』と聞いたな」
そのままゆっくりと振り返って…、その姿にだいぶ前になくなったはずの長い髪がなびいた気がした。
「それじゃあヒントをやろう」
再び自嘲を含んだ、けれども楽しそうに笑ってヤツは言った。
「大人たちにズタズタにされたワガママな子供は、自分を守る為にどうしたと思う?」
目を見開く。
それはヒントではなく問いかけであったけれど。
とても遠まわしな物言いを、何故瞬時に理解出来たのか。
混乱を極めた頭に、ヤツの楽しそうな声が届いた。
『さぁ、ちゃんと理解できたかな?』
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