僕等はここにいる
□『(それが俺の一番の望みだ、ねぇ)』
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ミュウに対して突然声色を優しくして話しかけたアーク、彼に懐いた様子のミュウ。
そしてすぐ傍にあったそんな事実に。
愕然としている彼等に興味をなくしたのかアークは視線を外し、ミュウはアークの腕をよじ登る。
それが肩まで登りきったのを見て彼はその小さな頭を撫でて微笑んだ。
すぐにそれを無にして視線をある人物へ向けた。
「ピオニー陛下」
「・・・・なんだ?」
向けられたピオニーは自分に話しかけてきたことを内心驚いていた。
ルークならまだしもアークとの接点は一つもない。
だが、そんな疑問の答えはすぐに出た。
「今まともに話ができそうなのがあなただけなので、少々話を聞いて頂きたいのですが」
実際周りのほとんどが放心状態で、意識がしっかりしているのはマルクト勢の他数名。
その中で更に選りすぐるなら皇帝であるピオニーが一番だった。
納得したピオニーが軽く頷く。
「聞かせてもらおう。」
「有難うございます。・・・話というのは今直面している問題に関して2つ程提案があるのです。一つは障気についてですが、こちらは1週間程の猶予を。そしてもう一つ、レプリカについてはレムの塔だけでなく他の大勢の者を含め、全員を保護して頂きたい。」
ピオニーはアークの丁寧な口調に少しばかり関心しながら聞いていた。
話に聞いていた彼と随分差がある。
これはひとえに少しでも常識を備えようというアークの努力による。
そしてアークは続ける。
「これはどちらもルークの願い、後者においては私の願いとも言えます。片方でも受けていただけないのでしたらどちらも無しとします。違えた場合はこの身が朽ちて魂だけとなっても手段は選びません。」
それはつまり拒否は受けつけないということだ。
障気はどうあっても消さなければならない、がレプリカを受け入れない限りそれすらどうにもできない。
彼の被験者を使う手もあるが、キムラスカは納得しないだろう。
仮にレプリカを受け入れてもそれを疎かにすれば彼は必ず何かをする。
妙な確信があった。
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