僕等はここにいる
□『俺達はここにいた』
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その時だった。
『させるかよ!』
「何!?」
突然ヴァンの身体からオレンジ色の光が溢れ出す。
それは少しずつ空へ昇っていった。
「な、何何何!?」
「アレは、第七音素!?」
アニスが慌ててティアが呟いた。
その光は確かに第七音素だった。
溢れる光、その一部が今度はこっちに向かってきて皆困惑しながらも構える。
でもその光は俺達を包み、全員の傷を癒しただけだった。
これは一体?
『ハハハ、無様だなぁ師匠?』
笑い声、皮肉ったような言葉。
ヴァンの方を向くと彼は膝を地につけて顔を歪めていた。
そしてその隣にはもう一つの影が。
自分と同じ朱色の長い髪、翡翠色の瞳、白い外套を靡かせて。
常に見せていた自嘲的な笑みはそこにはなくて、ただ楽しそうな笑みで。
“彼”は、立っていた。
『お久しぶりって言っても俺がなんだかアンタ知らないもんな、教える気もないけどぉ。因みにてめぇの第七音素はほとんど上に飛ばしたから、流石にローレライ解放とまではいかねぇが加護はもうないに等しいぜ?』
「っ、何を馬鹿な!」
ヴァンは音素を集めようとするが欠片も集まる様子がない。
それに慌てるヴァンを尻目に“彼”は呟く。
『思念体になってから音素の扱いスッゲェ得意になったんだよな〜。今じゃ陰険眼鏡にも負ける気がしないぜ』
「くそ、何なんだ貴様は!!?」
『うっせぇ髭面。やかましいんだよ』
まさかと思った、もしかしたらとも思っってた。
そして、身体は透けているけれど“彼”は確かにそこいる。
「・・・アー、ク?」
俺の小さな声に気づいた“彼”が俺の方を向いた。
『よお、ルーク』
ニカッと笑うアーク。
頬を涙が伝った。
『まったく、イタズラどころの騒ぎじゃないね。これってれっきとした嫌がらせでしょ?』
不意に別の声が響く。
誰の声か思い当たる前にアークの隣に緑の光が集まる。
それは少しずつ人の形になっていった。
『ああ、その方がしっくりくるかも』
『かもじゃなくてくるんでしょ?』
イタズラっ子みたいにクスクスと笑いあう2人。
その姿にヴァンが目を見開いた。
「シンク?・・・・何故だ、お前は既に死んだはず!」
『ちょっと、思念体になったところを物好きに捕まってね』
『捕まえました〜』
笑みを絶やさない2人にヴァンが呆然とする。
しかしすぐに我に返り表情を怒りに染めた。
「このっ・・・!」
『おっと』
ヴァンは2人に向かって剣を振るうがあっさり避けられてしまう。
そして2人は俺とアッシュの後ろまで跳んだ。
『避ける意味あったの?』
『ん〜、1人だけ触れる奴いたからさ。一応』
「・・・・お前等」
アッシュが呟くように声をかけた。
するとアークはまたニカッと笑ってみせる。
『後はお前等がやれよ?』
『せっかくアークがここまで御膳立てしてくれたんだから、無駄にしないでよね』
シンクに少しだけ睨みを効かされる。
アッシュの方を向くと彼も同じようにこっちを見た。
お互い一つ頷くと2人同時に剣を構えてヴァンに向ける。
ヴァンはそれを見止めると忌々しげに睨んできた。
「ふざけるな!!第七音素なんぞなくとも、貴様等などに・・・・!!」
「俺達はてめぇなんかに負けねぇ!」
「砕け散れ 咬牙鳴衝斬 !!!」
「これでも食らえ! レイディアントハウル !!!」
終わりを告げる鐘が鳴る。
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