僕等はここにいる
□『俺達はここにいた』
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地面が微かに揺れている。
『崩れ始めたみたいだね』
『ああ。・・・ルーク、これ借りるぜ』
「ぇ」
『大爆発、は俺が抜けたからたぶん大丈夫だろ。あとはお前次第ってな』
不意に俺の手からローレライの鍵を奪ったアークはそう言って俺達に背を向けて、歩き出す。
シンクもそれについていこうとする。
なんだか嫌な予感がした。
「アーク!」
思わず呼び止めると彼はピタリと立ち止まった。
それでも振り返る様子はない。
―――まさか、まさか・・・・。
一度空気を飲み込んだ。
「・・・・何、すんだよ」
『・・・・・・』
彼は何も言わない。
そんな彼を隣のシンクだけでなく、全員が見つめていた。
「まさかお前・・・、ローレライをっ」
『・・・・誰かがやるべきことだ。俺がやれば損もない』
ガイの言葉にアークはそう返した。
皆が息を呑む。
彼はそれ以上何も言わずに、振り向きもしない。
「そんな・・・っ」
「てめぇふざけんな!!勝手に消えたと思えばまた現れて、また勝手に消えるのか!?」
ナタリアの落胆の声に被さるようにアッシュが怒鳴る。
更にまくし立てようとするアッシュにシンクが諭すように言った。
『ふざけてなんかないよ』
「んだと!?」
『アークの望みは消えることだったんだから。なのにどういうわけか知らないけど、アークはまだこの世界に縛られてる。それなら解放と一緒に空に行くのが得策でしょ?』
誰も何も言えなかった。
彼にそんな望みを抱かせたのは俺達だから。
文句なんか言えない。
そこでアークが笑った気配がした。
『シンクが言ったのも理由の一つだけどな』
「・・・も、ということは、まだあるのですか?」
ジェイドが尋ねる。
『・・・・俺は世界なんてどうでもいい。でも、そんなどうでもいい世界でも生きててほしい奴等がいるんだ。・・・・・・数えるぐらいしかいないけどな』
「ご主人様・・・」
どこか優しげな声音で話す彼にミュウが涙声で声をかける。
彼は首だけ少しこっちに向けて苦笑した。
『俺はそいつらに死んでほしくないし、泣かせたり、悲しませたりしたくない。って、もう泣いてんのがいるけど』
きっとミュウと自分のことだろう。
アークが俺の中から消えてから、涙脆くなった気がする。
でもその涙を拭おうとは思わなかった。
そして再び前を向いて歩き出そうとしたアークに、ティアが言った。
「ごめんなさい」
彼の方が微かに跳ねる。
ティアは気づいているのかいないのか、しかしそのまま続けて言う。
「許してほしいわけじゃないけれど、あの時から・・・これだけ言いたかったの」
『・・・・・・』
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