太陽の名前
□0?夢を運んだ少年
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※クラティダ・セフィザ前提です。
「…う〜ん」
ティーダは困ったような苦笑を浮かべ、ついさっき届いた荷物と手紙を見つめていた。
『ティーダへ
元気にしてる?怪我はしてない?
今回は新しい商品の一部を送ります。美味しいから、たくさん食べてね。
体に気をつけて頑張って。
母より
PS.アップルパイにしたらきっともっと美味しいわよ』
「……作ってほしいならそう言えばいいのに。にしたって多いッス」
手紙をテーブルに置いて、荷物の中から一つ取り出した。
軽く拭いてかじりつくと瑞々しくて美味しい。
「うまっ。…そんじゃ、作りますか!」
せっかくだから皆にもあげよう、とティーダは張り切り荷物と共にキッチンに向かった。
* * * * *
その日の仕事を終わらせたセフィロスは何をするでもなくソルジャー用の休憩所にいた。
とても広いそこのど真ん中のソファを長い足を組み陣取っている。
彼の相棒兼恋人は生憎別件で不在だ。その為表情にこそ出ていないものの少々不機嫌である。
その心情を彼の纏うオーラが如実に語っていた。
今休憩所には他に誰もいないが、もしいたとしてもこの広い空間を壁伝いに必死に通り抜けることだろう。
この状況で彼のそばに寄りつく人間など限られてくる。
「あ、セフィロス」
その限られた人間の中にティーダはいた。
ここでパタパタと駆けてくるのが彼でなかったらきっと正宗の錆になっている。
更に言うなら無心に虚空を見つめていた顔を向けるのもティーダだからだ。
もちろん某元祖子犬は論外。
「…ティーダか」
「ザックスいないからって不機嫌だなぁ。もうすぐ帰ってくるんだからいいじゃん」
「お前のはちょうど長期任務だったな。気にならないのか?」
「オレらは毎日メールか電話してるもんねぇ。セフィロスもすりゃいいのに」
「声だけで足りるか」
「…その言い方アンタが言うとなんかエロいッスよ」
「知らん」
他人が聞いたらなんとも「ごちそうさま」な会話をする2人。
どちらも無意識なのだからどうしようもない。
そんな惚気の応酬の中、ふとセフィロスの目に映ったのはティーダが抱えた何か。
質素な紙袋のそれからは、どことなく甘い香りがした。
彼がセフィロスの視線に気づく。
「ああそうだ。これ皆に配ってるんだ」
そう言って中から取り出した物は透明なビニールで簡単に包装されていて、更に甘い香りが強くなった気がした。
ご丁寧に小さなプラスチックフォーク付き。
「アップルパイ。実家からいっぱいリンゴが届いてさ、交易の新商品らしいけど。余るほどあるからお裾分けに」
「何故わざわざ調理する必要がある」
「母さんが食いたいらしいからついでに。こっちの方が減りやすいし」
言いながらティーダはそれをセフィロスに差し出した。
が、セフィロスはそれを見つめているだけで動かない。
受けとる様子もなければかといってつっぱねる様子もなく。
ティーダは首を傾げた。
甘い物が嫌いなんてことはお茶会で黙々お菓子を食べていたのでまずない。
ダイエット?不必要、というか想像できない。
何か入ってるかも?それはティーダ自身誓って何もしてないと言えるし、そんな悪戯する人間でもない。
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