太陽の名前

□02:未来の変化
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「・・・でっか」
「スゴイだろう?」


ここに来て約半年、目下文字の勉強中のオレは目の前の大きな船に書いてある『しんら』という文字に嘆息した。


父さんが言うようにこの名前は聞いたことがある。
というかテレビでも新聞でも果ては子供たちの話題にまで出てくるのだからわからないはずはない。


なんで嘆息したってそりゃ、見飽きたんだよ。



しんら、新羅っていうのはとても大きな会社の名前で港町であるここ、コスタ・デル・ソルにもよく貨物船がやってくるらしい。


バイクとか武器とかとにかくいろんな物を作っている。



2000年前とは比べ物にならないくらい、今の世界は機械技術が進歩していた。
その代わり自然が廃れたように思う。


この町の海は綺麗だけど新羅の船が行く港は水が濁ってきてるって聞いた。




「さて、慎重に作業しないとな。お得意様だ」
「OK」



今日はその新羅の船に荷物を運ぶ仕事を手伝うことになった。
かなりたくさんの荷物を運ぶから人手が足りないんだ、って父さんにお願いされた。


オレは即答でOK出したんだけど母さんが危ないからって最初は止めた。


まあ危ない理由は新羅にあるわけだけど。



それでもやっぱり人手が足りなくて母さんは渋々承諾してオレは今ここにいるわけ。





父さんと荷物置き場に行くと予想通り新羅の作業員が訝しげにオレを見た。


そして周りで見張りをしている新羅の兵隊も。
(ていうか会社が軍隊を持ってるってどうなんだろう)


「なんだあのガキ?」
「さぁな。手伝いにでも来たんじゃね?」
「んなわけねぇだろ。あんな細っこい体じゃ荷物につぶされちまうよ」
「確かに」



陰口っていうか嘲笑っていうか、丸聞こえだっつうの。


ちょっとだけムッとしながら無視を決め込んで他の大人たちに紛れる。


そいつ等はまだ笑ってたけど、今にみてろよ。



「よし、それじゃ作業開始!」



実は責任者な父さんの声を合図に皆が動き出した。


オレも動いて荷物の中では一番小さい箱を持ち上げた。
運びながらちらりとさっきの奴等をみたらヘルメットで口元しか見えないその口をポカンと開けてオレを見ていた。


それにちょっと優越感を覚えながらオレは船の中へ消えた。






「・・・あの荷物、あれでも70キロあるよな?」
「・・・ああ」






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