Blackjack

□キズナ
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「先生…具合ろお?」

「…ピノコか。そうだな、そろそろ抜糸できるかな」

「…そっか…」

「?」

ブラックジャックが自身の腹膜炎のオペをしてから十日…
日に日に良くなっていくブラックジャックとは裏腹にピノコの表情は暗くなっていっていた

「ピノコ、あのな…」

「あっあたちお洗濯してくゆ!」

そう言って椅子から立ち上がると一目散に部屋から出ていってしまう


まただ

ここ二、三日こうして話し掛けようとするとこんな調子ではぐらかされてしまう


まるで何かを拒絶するかのように

(…俺が治ったら、いの一番に追い出されると思っているんだろうな…)

確かにあの時自分が治るまでいてもいいと約束をしたかもしれない

だがこの数日間、ピノコはかいがいしく世話をしてくれた
足りない身長を椅子で補い、以前は見るも無残だった家事もなんとか熟せる様になっていた

そんな彼女をベッドの上から見つめながら、ブラックジャックは次第に心を動かされていた


「けど…なぜあんなにも他所へやられることを嫌がる?」


確かに赤の他人にもらわれることは不安もあるだろう

けれどそれをいうなら自分も赤の他人だしなにより、年中仕事で飛び回っている自分よりははるかに可愛がってくれるだろう

「ピノコ…」

閉ざされた扉を見つめながらブラックジャックは溜息をついた







「オハヨー先せ…」

「おはようピノコ」

「?!治った…の…?」

「あぁ心配かけてすまないな」

その一言でピノコの表情が悲しみに歪んでいく

「…よかった、ね」

目にみるみる涙が溜まっていくのに必死で笑顔を保とうとする姿が痛々しかった

「ピノコ。あのな…」

「聞かない!聞かない聞かない聞かない〜っ!」

「ピノコ!!」

逃げ出そうとする小さな身体を捕まえると、ピノコはその手から逃れようと必死でもがいた
しかし、体格差や力の前に結果は歴然だった
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