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□今日も私はためいきをつく
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「たらいまぁ〜…」

ぐったりと憔悴しきったピノコの声が玄関から響いてくる

私はカルテをまとめる手を一旦止めてドアの方を見遣った


…が、いつまで経っても廊下もこの部屋も静かなままだった
いつもなら真っ先に廊下をどたどたと駆け抜けて私の部屋に飛び込んできて今日学校であったことを喜々として話し始めるのに

いつもとは違う様子にさすがに不安を感じて、私はピノコの部屋を覗き込んだ

「…ピノコ?」

そこにはランドセルを床に放りだしドアに背を向けるようにベットに座ってひどくふて腐れた様子の彼女の姿があった

「どうかしたのか?」

「先生ぇ…」

振り返った少女を見て私は思わずぎょっとした

髪の毛はぐしゃぐしゃに乱れリボンは解けて端っこがほつれてしまっている

頬っぺたやおでこには砂や泥が点々と付着しているしとにかくボロボロな状態だった彼女を見て一目でピンとくる


「…またケンカしたのか?」


誰に似たのかプライドが高くてなかなかに喧嘩っ早い彼女はクラスの男子と取っ組み合いのケンカをしてこうしてボロボロになって帰ってくることがあった
学校にまだなじめてなかった頃は毎日のようにこんな状態だったが最近は減ってきていて安心していたのに


「…ピノコわゆくないもん。あいつらがガキならけらもん」

ブスッと不機嫌全開の表情のままぽつりと呟いたピノコの頭を宥めるようにポンポンと軽く撫でると説き伏せるように言った

「だからってこんなになるまでケンカするもんじゃないよ」

「らって…らってぇ…」

「私の奥さんならそんな傷だらけで帰ってきてほしくないな」

その言葉にピノコはグッと言葉を詰まらせてしまう

けれどピノコがそんな悲しい顔をして帰ってくるのは私も悲しい

生きていくのにつらいことや悲しい経験をしていくのは大切なことだがそれはもう少し大きくなってからでいい


「おいで。消毒をしなくちゃな」

「うんっ」

漸く少し微笑んだピノコを連れて私は処置室へと向かった
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