Secret・2
□勝ったとか負けたとか
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例えば彼女が他の人間から好かれなければいいのにと思う
自分だけが愛していればそれでいいと思ったから
「あっ、写楽かやらぁ」
ソファの上でだらりと寛(くつろ)ぎながらピノコと二人でのんびりとテレビを見ていた時だった
不意に鳴ったメール着信音にブラックジャックは苛っとした
この音はピノコの男友達である写楽用に設定されたものだ
それがわかっているからブラックジャックにとってこの音は忌むべきものになっていた
まるでそれは彼女の特別に位置付けられているかのようで気に入らなかった
「ふふっ…メーユ送信っ、と♪」
自分は携帯電話を持ってはいない
いくら便利だからといって医療機器に悪影響を及ぼすものを持つなんて医師としてのプライドが許さなかったし、なにより一度持ってしまったらきっと尚更束縛することを止められなくなるだろう
離れていても気になって仕方ない
ピノコはきっとこんな思いを知りもしないのだろう
そんなことを考えていると再び携帯電話がメールの着信を知らせる
そしてそれを読んでクスクスと楽しそうに笑いながらピノコは返事を打っている
「ピノコ、おかわり」
苛立ち混じりに空になったカップを突き出すがピノコはこちらに視線を合わせることなく「んーまってぇ」と気のない返事を返しただけだった
自分のお願いがあんな他人のメールに負けた…
そんな考えがブラックジャックの中にずしりとのしかかった
「れきたぁ…っと。ごめんちゃ先生今…」
ブラックジャックへと向き直ったピノコの顔に影がかかった
「っん…?ん…っぅ…」
いきなりするにはあまりに濃厚なくちづけにピノコはソファに身を沈ませてなんとか受け入れる
口腔を愛撫するような舌の動きに背筋にピリリ…と電流のようなものが走る
まるで行為の始まりを思わせるようなそれに少女の身体の中で徐々にスイッチが入っていく
「ん…ぁ…せんせ…」
声に誘われるようにスカートの中に手を忍び込ませようとしたその時だった
「あ…メーユ…」
再び鳴ったあのメロディー
なんとも嫌なタイミングで鳴ったそれにまるでピノコに触れさせまいという悪意さえ感じてブラックジャックの我慢はとうとう限界を超えた