Blackjack・3

□Heart glowing
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生温い物語なんていらないの
幸せになるのが姫と王子だけとか

そうとは限らないでしょ?






「ピノコもうそんなころもっぽいのよまないのよさ」

「子供っぽいもなにもまだ子供だろう」

「18歳のレレィなのよさっもう!」

そう言って手に押し付けられた本をぽいと投げ捨ててピノコはそっぽを向いた

生い立ち上ピノコが子供扱いされることを何より嫌っているのはよくわかっている

だが、外の世界での生きた歴史がないピノコは子供同然でまだまだ知らないことも多い。それもあってかブラックジャックは彼女とこうして同じ話題で衝突を繰り返していた


今彼女が投げ捨てた本だって始めの内は喜んで読んでいたというのに……子供とはわからないものだ


「ピノコ」

「……きやいなのよさ」

「何がだ」

「おひめしゃま……きやいなのよさ」

ピノコの言葉にブラックジャックはますます首を傾げる
これだって以前は言わなかったことだ

一体何があったというのか


「ちゃんと言葉にしなさい。でなければわからないぞ」

「うん……」

ブラックジャックがそっと手招きすると、その小さな身体が腕の中に飛び込んでしっかりとしがみついた

表情を見せないままにピノコはぽつりと呟いた


「ピノコ…きづいちゃったのよさ」

「……」

漸く自分の心を吐露しようという気になったピノコの言葉にブラックジャックは黙って耳を傾ける

女心というものにそれほど聡いというわけではないことを自覚しているから、こういう時は何も口を挟むべきではないことはよくわかっている
だからこそ彼女の言葉を大人しく待った


「おひめしゃまじゃ、先生のそばにいやえないのよさ」

「え…?」

「おひめしゃまじゃ先生においてかえちゃうのよさ。やくたたじゅらかや」

「………」

「ピノコね、先生にひちゅようとさえたいのよさ。そばにいたいのよさ。先生にピノコやないとって思ってほしいのよさ」





あぁ
子供だなんて思って悪かった


そう言って見上げた彼女の瞳は生まれた頃の無知なそれではもうなかった


あの頃よりもずっと甘く、重く、熱く、彼女の言葉が私の心にずくりと突き刺さった


「ピノコね、先生あいちてゆ」


舌ったらずな物言いはあの頃と変わらないのに、響いたその衝撃ときたら


くらりと眩暈を起こすには充分過ぎる威力だった






END





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