Egoist
□最終兵器彼女 〜第一章
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この世界は病んでいる
「またか…」
朝のニュースを見ながらブラックジャックは溜息をついた
見つめる先のブラウン管の中には外国の小さな国同士の内乱のニュースがやっている
「最近このニュースばっかりなのよさ。トクバンれアニメとかやんなくてちゅまんない」
「馬鹿、お前が呑気にアニメ観てる間にも沢山の人が死んでるんだぞ」
「アッチョンブリケ…」
「全く…こっちは一人治すので精一杯だというのに戦争じゃそれがおっつかない程に人が死ぬ。やってられんね」
「先生…」
食後のコーヒーを啜りながら彼は溜息をついた
「それじゃあ行ってくる。留守を頼んだぞ」
「あらまんちゅ!まかちといて」
ピノコの笑顔に見送られながらブラックジャックは車に乗り込んだ
こうして連れていけない時も多々ある。依頼先が危険な場所であったり、手術を行うこと自体にリスクを伴ったりと
非力な彼女は自分で自分の身を守ることすら出来ない
家にいたって100%安心とは言えないがそれでも危険からはいくらかは遠ざかることが出来る
それでも仕事を終えてお土産を片手に帰ればまたあの笑顔に迎えられて…
私の中でそれがいつの間にか当たり前になっていた
「ふぅ…」
治療を終えていざ帰ろうとした矢先のことだった
空港がゲリラに占領されて帰れなくなってしまったのだ
依頼人の好意で身を置かせてもらっているがこれではいつ帰れるかのめどがつかなくなってしまった
「ピノコのやつ心配しているだろうな…」
電話も通じないここでは自分の安否を伝えることも叶わない
ドーン…ドーン…
遠くで銃声や爆音…それに交じって微かに悲鳴が聞こえる
「まったく…どこもかしこも戦争ばかりで、世も末だな」
そう言って苦笑いを浮かべた時だった
ドドォンッ!!!
「な…?!」
一際大きな爆音が響き、屋敷全体が大きく揺れる
咄嗟に外に飛び出すとそこはさながら地獄のようだった
逃げ惑う人々
燃え上がる炎
そして死体…
「うっ…」
ある程度のものには見慣れてきたと自負しているが人の死に行く様を見てなんとも思わない程に人間の心を捨てている訳でもない