短編・中編
□境目セブンティーン
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「あはへぇーっ」
ぐぎー、と伸びをして、あたしは夕暮れの校門の間をすり抜ける。
学校の校門って、なんかオンとオフの境界線だなって思うんだよね。
あたしは、校門を出た瞬間に毎日、心の中でガッ!って鼻をほじる。
これが、自分流のオフの自分が帰ってくる儀式。
それくらい、あたしにとっては重要なポイントなんだ、ここは。
朝はもちろんここを入っていくので、その瞬間に自分の模試を思い出す。
すると自然と背筋が伸びて、手はいつのまにか携帯をドライブモードに切り替えている。
こいつがいたら授業中バイブがうるさくて勉強にならないもんね。
みんなバイブが鳴った瞬間水を打ったように静まり返るし‥「誰だ誰だ誰だ」みたいに。もはやコレはマナーモードじゃない。
そんなわけで、今日もあたしは校門を出て、鼻をほじる。(心の中で)
でも今日は金曜日、片指だけじゃ足りないな。
ツイン人差し指でズボッてオフに帰りたい。
それくらい、今日はハードだったんだ。
おわったよ今週が。
やっとおわったよ、一週間。
県下一の進学校に通うあたしには、教科書を完全にシカトする授業どもが詰め込んである一週間が、それはそれは過酷でたまらない。
特に金曜日がひどいんだ。
7限まであるし、完璧に予習しなきゃ答えられない授業ばっかり。
正直、前日の夜が一番大変で当日は復習みたいなものだ。
でもこれで前日なんもやらないで寝るとどうなるかって、
今日のあたしみたいになる。
授業中は自分が指名される順番をアタマをフル稼働させて計算し、その問題だけ解いてた。
んだけど、あたしの席は一番後ろの1個前。
先生は、なんとも意地悪なことに、あたし、後ろの子、と指したあと、もう一回あたしを指した。
えぇ。戻ってきちゃいますか。
戻ってくるなんて思ってなかったあたしは、1回目に「完璧に予習しました」みたいな顔でそつなく答えた自分をアヒャアヒャと誉めていたので、2回目はあえなく粉砕した。
(みんなの「バーカ」みたいな視線が‥つらい)
そんなわけで、校内偏差値が平均並みのあたしにとっては、授業ってほんとあなどれないんだ。
でも今週もなんとかおわったし。‥終わらせちゃいけなくても強制終了させていただくし!
勉強は土日にやればいい。
今日は、絶対勉強してやるもんか。
だって、今日は、帰ってくるんだ。
太一が。