短編・中編
□羨望法則
2ページ/6ページ
小学生の女の子って、ほんとわかんない。
「しんすけくん、かっこいいよね!」
「えー、じゅんくんのがあたし好きー」
「じゅんくん?まぁおもしろいけど・・・しんすけくんはかっこいいと思うー」
俺は、目の前を歩く色とりどりのランドセルを眺めながら考える。
イマドキのランドセルって、なんでこうちかちかしてんだろう。
絶対損してるよこの水色のランドセルの女の子――男のつまんないスケベ心なんて何にも知らなさそうな赤のランドセルしょってるから、可愛くってつい手が出るのに。
てか、俺が小学生んとき女の子って男に「くん」なんてつけてたかな。
・・・もしかして恋バナ限定でこんな可愛いらしく敬称つけてくれんの?
普段は箒持って「もお男子!」とか言ってツンツンしといて?
だとしたら女ってやるな。小学生もあなどれないじゃん。
信号が変わる。
ランドセルよりもはるかにくすんだ色をした車が、目の前を横切っていく。
「あー信号あかんなっちゃったー・・・」
「ねぇねぇしんすけくんだったらさ、今ここわたっちゃうよね!」
水色のランドセルをしょった女の子が、白と暗灰色の道路に一歩踏み出し、興奮したような口調で言う。