短編・中編

□羨望法則
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ほ。しんすけくんはやんちゃくんなのか。


「あー、じゅんくんは渡れないよねぇ」


オレンジ色のランドセルが揺れる。


じゅんくんは、慎重派らしい。


すると、最初にじゅんくんを推していた赤いランドセルの女の子が、少し膨れっ面をしてぱっと両手でランドセルの持ち手を押さえて、二人に向き直った。


「じゅんくんだって、かっこいいもん。・・・じゅんくんも、リレーの選手だもん!」







「――っ遼!」


そのとき、凛と響いて耳に滑り込んで来る声と、軽やかな足音に俺は振り返った。


「絢、子?」


疲れちゃった、と息を切らせながら、俺の部活でくたびれきった真っ黒のエナメルバッグを叩くのは、腕時計をした細い手首。


コツ、と隣に立った足元は、いつものようにパンツスーツにオープントゥの黒いパンプスだ。


「絢子・・・それで走ったわけ?」

「悪い?あ、言っとくけど私朝は走ってないわよ?ちゃんと始業の30分前には着いてるんだから。出席日数で担任から電話来るあんたと違って」

「はいはいはい姉貴みたいなこと言うなよ・・・今日は?もう帰るとこ?」

「うん、タクシー拾って帰ってたんだけど。ランドセルの姫君に囲まれて突っ立ってる寂しい男子高校生見つけちゃって、」
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