08/29の日記
08:23
強襲!
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その後、一通りタルタロスの中を探検した俺達は元居た部屋に戻ることにした。
もう少し外の空気が吸いたいと言って甲板に残ったバジル君だけ残して。
そんな彼を心配しつつも部屋の近くまでやってくると、廊下に佇む骸の姿が目に留まった。
「おや?僕に何か御用ですか?」
目が合った途端、話し掛けられた俺が「別に…」と答えた瞬間だった。
ガンッ!!!!
何かがぶつかってきたような衝突音と共にグラッとタルタロス全体が揺れた。
「な、何っ!?」
「綱吉さん、大丈夫ですか!?」
よろめいて膝を付いた俺を心配して駆け寄ってくる隼人君。
「ム…地震、ではなさそうだね…」
独り言のように呟き怪訝な顔をするマーモン。
「大佐、これは一体何事だ?」
軍人らしく冷静に情況を把握しようと尋ねたラルに、骸は小さく首を捻って分からないと示してから壁の通信管を手にする。
「こちら六道骸。操舵室、応答せよ。これは何事だ?」
『こ、こちら操舵室…魔物の群れが甲板に!次々と…う、うわっ!?く、来るなっ……!!』
通信管越しに聞こえた悲痛な叫びを最後に、通信は途絶えた。
「どうした!?……通信が切れてますね……」
「…魔物が群れを成して陸艦に襲い掛かるとは…」
厳しい面持ちで通信管を壁に戻した骸と、険しい顔で腕を組み考え込んでいるラルの様子を見れば、これが異常事態であることは俺にも分かった。
魔物ってニ、三匹でも十分に手強いのに大群になられたら、きっと手に負えない。
どうしようと途方に暮れていた俺は、ふと外に残してきたバジル君のことを思い出した。
彼は今たった一人だ。魔物に襲われたらひとたまりもない!
「ば、バシル君を探してくる!」
「おい、ツナ!今の状況でむやみに動き回るのは危険だ!」
俺は慌てて踵を返し駆け出した。背後からラルの声が引き留めるのも構わず。
しかし、その直後。
「その通りだ、坊主……」
低い男の声が聞こえて前方に目をやると、稲妻のような電気の塊が轟音を上げて迫ってくるのが見えた。
壁に背中をくっつけるようにしてギリギリでそれをかわしたところで、グッと何かが喉を圧迫するように首に押し付けられた。これは…ビリヤードのキュー……?
「おおっと、下手に動くなよ。この坊主の首へし折られたくなかったらな…」
俺の首にキューを強く押し付けながら脅すように言うのは、金髪をオールバックに固めた中年の男性だ。
涼やかな目でチラリと流し見られただけで、殺気を感じて身が竦んだ。
ヒッと無意識に喉を鳴らしながら視線を彷徨わせれば、呪文の詠唱を中断して口をつぐむ骸と目が合った。
「やれやれ、よもやこのようなところで貴方と相間見えることになろうとは…噂はかねがね伺っておりますよ、黒獅子γ?」
軽口を叩きつつ、左右で色の違う瞳は相手の一瞬の隙を狙って爛々と輝いていた。
「ふん…そりゃこっちの台詞だ、死霊使い。戦場で屍を漁るお前の噂は俺の耳にもよく届くぜ?」
相手が意趣返しのように返した台詞にラルの眉がピクリと動いたように見えた。
「…『死霊使い』?…まさか、大佐が……?」
信じられないとばかりに小さく目を見開いて呆然と呟く様子から言って、かなり有名な名前なんだろう。
でも、グッと気道を圧迫されてすぐによそ事を考える余裕なんて失くなった。
「…ぁ…っ…く………」
「導士バジルをこちらに渡して貰おう。出来ない、とは言わねぇよな……?」
沢田公爵家の一人息子を、まさか犠牲には出来ないだろう?
こちら側の事情は何もかもお見通しだというように付け足された言葉を疑問に思うより早く、γは懐から取り出した小さな箱のような物を骸の頭上へと投げた。
それが天井へとぶつかった瞬間、カチリと固定され箱から照射された光が骸の体に降り注ぐ。
「…っ…く…これは封印術(アンチフォンスロット)…?…」
ガクリと膝から崩おれて呻く彼にγはニヤリと笑う。
「本当は導士バジルに使おうと持ってきていたんだが、こんなところで役に立つとはな…」
「…生憎ですが…はい、そうですかと従う訳にはいきませんね…」
追い詰められた状況なのに骸の顔は何処か不敵に見えた。まるで追い詰めているのは寧ろ自分の方だと言わんばかりの自信に満ちた表情に……。
それにγが一瞬たじろぐような気配を見せたときだった。
「隼人、天井に第五音素を!」
「…へ、あ…任せろっ!」
骸の合図と共に天井に向かって隼人君が火を吹くと眩ゆい閃光が当たりを包み込み、俺は咄嗟に目をつぶっていた。
ザシュッと何かを切り裂くような音が妙に耳に冴えて聞こえたように感じた。
後書き↓
お待たせしました。いよいよ、骸に封印術かかっちゃいました♪(←はしゃぐところではない
後々「誰のせいでこんなことになったと…?」とツナをネチネチ虐める骸しゃんを書きたいv
相変わらずのローペースですが、更新頑張りますよ!
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