NovelA
□こんな恋愛アリですか?
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何となく暇潰しに並盛に寄った僕は、今現在激しい後悔に襲われていた。
その原因は僕の腰に腕を回し、ベッタリとくっついてくる人物に外ならない。
「あの…歩きにくいのですが…」
離して下さいと言いつつ、腰に巻き付く細腕を軽く叩きながら後ろを振り返れば、相手は真ん丸な瞳で不服そうに僕を見上げてきた。
「だって〜今日寒いじゃん」
「僕はどちらかと言えば低体温ですし、暖を取るには不向きだと思いますが…」
よく分からない理屈をこね回す彼に呆れた目を向ける。
そう、彼…なのだ。彼女、ではなく。
「好きな相手にくっついてると心があったかいんだよ」
そう僕に好き好きと纏わり付き事あるごとに愛を囁く彼は悲しいかな、同性なのだ。
オマケに僕の最も忌み嫌うマフィアの後継者候補ときた、もう凹むしかないだろう。
女であったならば、体よく性欲処理にでも利用して適当に遊んでやるのだが、流石の僕と言えど男相手にそんな気は起きない。
「僕は身も心も寒いです。離れて下さい。さもないと力付くで捩伏せますよ?」
そう警告すれば、何故か彼…沢田綱吉はカァと頬を赤らめモジモジと身をよじった。
「お前にそう言われると…なんかドキドキする…」
ようやく腕を離してくれたはいいが、指先をいじいじしながら上目遣いに見上げてくる彼に、目眩を覚えた。
僕は別に彼が赤面するようなことを言った覚えはないのだが、また弱い頭がお得意の勘違いをしたのだろうか?
思えば彼が僕に惚れた段からして、既に勘違いの産物だったように思う。
「君ね…こんな僕の何処がそれほど好きなんですか?」
自分で言うのもなんだが、顔以外良いところなどないと自負しているのだが…。
毎度猛烈アタックを掛けられるほどにベタ惚れされている理由が分からない。
だが、沢田綱吉は迷うことなくキッパリと答えた。
「全部」
「ぜ、全部ですか?」
そこまではっきり言われると咄嗟の反論も思い浮かばない。
「うん。顔も声も、ちょっと捻た性格も…チョコ好きなとこも全部含めて大好きだよ」
恥ずかしげもなくそんなことを言ってのけるものだから、反って僕の方が気恥ずかしくなる。
「…君、趣味悪いですよ?」
「うん、よく言われる」
落ち込む様子もなく肯定する彼に、僕は頭痛が増すのを感じた。
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