03/07の日記
03:51
激突
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あの後、魔物と時々交戦しながらフーブラス川を進んでいた俺達はようやく川を横切る段にまで差し掛かっていた。
まだ洪水の影響か少し水位は高かったが水流を穏やかなものだった。
透明な水が陽光を反射して眩しく輝いている。
「わぁ、綺麗…」
思わず呟く俺の横で山本が安堵の吐息を漏らした。
「良かった…水は澄んでるし、水嵩も思った程じゃねぇな。これなら歩いて渡れるぜ」
そう呟いた彼に骸は観察するような冷徹な瞳を向ける。
「ほぉ、貴方は自然にも造詣がおありのようですね?」
何か含みのある言い方にカチンときたらしい山本は「普通だろ」と素っ気なく返していた。
何だかギスギスした雰囲気に落ち着かなくて足を速めた俺はうっかり足を滑らせ、川に落ちそうになる。
「うわっ!?」
グラリ、と傾いだ身体を伸びてきた山本の腕が支え、抱き寄せる。
「ツナ、大丈夫か?油断すんなよ、川の石って苔むしてっから結構滑んだよ」
優しく背中を撫でてくれる山本の手にホッとする。
「平気…ありがとね、助けてくれて」
礼を言えば「良いってことよ」と爽やかに笑って返される。
「ま、何にせよ、自然を舐めるなよ?自然ってのは突然牙を剥いて猛威を振るうもんだからな…」
「うん、分かった…」
もう一度軽く会釈して山本から身体を離し、今度は慎重に足を運ぶ。
ようやく川を渡り終え、対岸に着いたときだった。
「おや?この殺気は…誰です?出て来なさい」
そう静かな声で呟いた骸に応えるように近くの岩陰から、一人の少年が姿を現す。
紫の髪に、大きなサングラス、口ピアス。確かスカルって名前だった筈だ。
「待ってたぜ…」
そう言ってこちらを睨む彼の殺気に肌がピリピリと痺れ、思わず後退りする。
バジル君が慌てて前に進み出て、彼に話し掛ける。
「スカル、話を聞いて下さい。この方達は悪い御方ではないのです」
そう説得するバジル君にスカルは首を左右に振る。
「止めないで下さい、バジル様…コイツらはお袋の仇だ」
そう険呑な声で呟いた彼に俺達は固まった。
「…に言って?」
「とぼけるな、ライガクイーンを殺ったのはテメェらだろ?森の魔物達が言ってたぜ…」
ギリ、と拳を握りしめ、こちらを睨んでくる彼に、ラルは「なんと」と驚嘆する。
「ライガクイーンが母親だと?」
馬鹿な、と呟くラルにバジル君が説明する。
「彼は幼い頃魔物に育てられたのです。魔物と意思疎通出来る能力を買われ、オラクルの幹部になりました」
「…成る程ね、僕達は彼にとって母親殺しの仇って訳ですか」
他人事のように呟いた骸にスカルが射殺すような視線を向け、臨戦体勢に入ったときだった。
グラリ、と地面が揺れ出す。
ガタガタと激しい揺れに、地面はひび割れ、そこから白い煙のような物が噴き出す。
「いけない、障気です!」
吸い込むな、と骸が声を掛けたそれを吸い込んだらしいスカルが呻き声を上げて地面に倒れる。
すると骸はすかさず手から槍を取り出し、意識のないスカルに近づいていく。
「ちょっ、何する気だよ!?」
慌てて止める俺に骸は冷静に答えた。
「放っておけば、また何れ命を狙われます。根源を絶つのは当然でしょう?」
「そんな、意識のない相手を殺すなんて!」
止めろ、と声を上げる俺を骸の冷めた瞳が映す。
「相変わらず生温いくらい優しい子ですね。反吐が出る…」
吐き捨てるように言った骸が槍を翳すのをバジル君が制した。
「お待ち下さい。彼は拙者の元付き人です。どうか命までは取らないで下さい」
そう真っすぐな瞳で見つめてくる彼に、骸は溜息を一つ、槍を納める。
「…仕方ありませんね」
バジル様の頼みとなれば断れません、と肩を竦めた彼にバジル君はホッと息を吐いた。
「障気の当たらない場所まで運んでも構いませんか?」
「此処で見逃す以上、文句を言う理由はありませんね」
素っ気なく答えた骸に苦笑した山本が、倒れたスカルを肩に抱き上げる。
「でも、俺達もヤバイんじゃない…」
呟いた俺に同意するように山本も頬を掻く。
「あぁ…絶体絶命ってやつだな…」
そこかしこから噴き出す障気で辺りは真っ白だ。逃げ場はない。
絶望した俺達をラルの声が呼ぶ。
「皆、こっちに集まれ!」
呼ばれるままに近付けばラルが譜歌を歌い出す。
「何故、今譜歌など…」
訝る骸をバジル君の声が制した。
「待って下さい、骸。これは、ユリアの譜歌です」
「♪♪〜♪…厳固たる守り手の調べ…フォースフィールド」
その声と共に展開された光の障壁が俺達を包み込んだ。
続く?
後書き↓
半端なとこで一旦、エンド。
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