03/14の日記

21:12
激突、カイツール
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ようやく平原を抜け、国境の街カイツールに着いた俺達は宿屋を素通りし、関所で足止めを食らっている人影を見つけた。

「だからぁ…旅券も通行証もなくしちゃったんだよ。通して?」

甘ったるい声音で言って小首を傾げるフードの少年、マーモンに兵士達はにべもなく手を振ってあしらう。

「駄目だ駄目だ、旅券がなければ通せない。諦めろ…」

そんな冷たい言葉にマーモンは小動物みたいな声で「うみゅ〜」と言って踵を返した。

や、やっぱり可愛い…。胸を射抜かれてキュンとしていた俺だったが……。

「…月のない夜には気を付けなよね……」

ボソリ、と低い声で吐き捨て、ニヤリと口元を歪めたマーモンに、思わず見間違いかと目を擦った。

有り得ない。あんな可愛い彼があんな黒い笑い方をする筈がないと自分に言い聞かせていた俺の後ろでバジル君が苦笑する。

「マーモン…綱吉に聞こえてしまいますよ?」

「ぁん…?」

ガラの悪い声を上げて、こちらを見た彼は小さく口を開いて「あ…」と呟くと、いきなり凄い勢いで駆けてきて俺に抱き着いた。

「綱吉、会いたかったよ…無事で良かった」

クン、と犬のように鼻を鳴らして擦り寄ってくるマーモンが可愛くて内心で悶えていると、つかつかと近寄ってきた骸に引き剥がされてしまった。

「君も無事で何よりです。マーモン…」

「へぇ…アンタが心配してくれるなんて思わなかったな…」

見えない火花をバチバチと飛ばしている彼らが怖くて後退れば苦笑した山本が肩を抱いてくる。

「マーモンだっけ?面白ぇ奴なのな?」

「や、山本…そんなこと言ってる場合じゃ…」

慌てて目を戻せば、彼らの口論じみた会話は更にヒートアップしていた。

「えぇ、大切な国書を失っては元も子もありませんからね」

「フン、アンタらしいね…ところで僕が居ない間に彼に妙なことしてないだろうね?」

「はて、妙とは…?」

わざとらしく肩を竦めた骸に、マーモンは口のへの字を強調するように口角を更に下げた。

「…惚けないでよ?君が綱吉をそういう目で見てるのなんか百も承知なんだからさ」

詰め寄るマーモンに骸は涼しい顔でやれやれと首を振る。

「まさか…あんなお子様相手にそんな気は起こりませんよ。君こそ彼にえらく執着してるじゃありませんか?」

「悪い?一目惚れなんだよ。分かったら邪魔しないでよね…」

最後ボソボソと話し合っていた彼らの会話はよく聞こえなかった。

そんなことより現実問題、考えなきゃいけないことがある。

「…旅券がないと通れないらしいな…」

渋い顔で呟くラルに俺はある提案をしてみた。

「父さんの名前を出したらどうかな?」

だが、それは山本に一蹴された。

「駄目だと思うぜ、ツナ。此処はマルクト領内だ。反って不利になる確率が高ぇよ」

そっか、どうしたらいいんだろ…。

「やっぱ、旅券が必要かぁ…」

そう溜息混じりに言った俺の頭上から、何処かで聞いたような声が響く。

「…此処で命果てる者に、そんな物は必要ないな…」

ゾッとするくらい冷たくて殺気を帯びた声に、俺は咄嗟に後ろへと跳び退った。だが、バランスを取れず尻餅をついてしまう。

それから一瞬後に、俺の立っていた場所に剣を突き立てた何者かの姿。

誰だ?確認しようとした俺に再び剣を構えた奴が向かって来る。マズイ、このままじゃ…。

ラルの譜歌も骸の槍も間に合わない。山本が刀に手を掛けたまま悔しげに舌打ちする。

俺、死ぬの?

絶望感に目が眩んだ俺の前に、見慣れた逞しくて広い背中が俺を庇うように立ち塞がる。

ガンッと刃同士がぶつかる音が辺りに響いた。

「…勝手な真似、してんじゃねぇぞ、I世…俺はこんな命令した覚えはねぇ…」

俺を庇って剣で相手の攻撃を受け止めた人物は低く凄むような声で言って、思いきり相手の剣を弾いた。

「チッ…リボーンか…邪魔をしおって…」

相手は不愉快そうに舌打ちする。

「剣を収めろ、I世!俺の命令が聞けねぇのか?」

そんな言葉に相手はまた舌打ちし、渋々ながら剣を鞘に戻すと素早く身を翻し、駆けて行ってしまった。

ハァ…と溜息を吐いた人物がゆっくりとこちらを振り向き、黒真珠みたいな瞳に俺を映した。

「…にしても、さっきの避け方は無様だったな、ツナ…」

そう悪戯っぽく口元を歪めた彼の懐かしい微笑が俺の涙腺を緩ませた。

「…いきなり、それはないよ…師匠…」

鼻声で答えた俺に相手は苦笑しながら近寄ってきて、俺に向かって手を差し延べた。

「ほら、立てるか?ったく、心配させてんじゃねぇぞ、バカツナが…」

俺の手を取りながら呆れた口調で言った師匠は、クシャクシャと俺の頭を乱暴に撫でた。

「ご、ごめんなさい…師匠。…会いたかった…」

感極まって抱き着くと、それに答えるように師匠も俺を抱きしめ返してくれる。

周囲では息を飲む音や歯軋りする音、舌打ちなんかも聞こえたけど、それもどうでもいいくらい嬉しくて堪らなかった。

「おいおい、いきなり見せ付けてくれんなよ、リボーン謡将?目の毒だぜ」

辟易したように呟いた山本に、師匠はニンマリと笑い、益々強く俺の腰を抱き寄せてくる。

「何だ、羨ましいのか?」

そんな挑戦的な態度に、山本が一瞬凄く怖い顔をした気がするけど…気のせいだと思いたい。




続く

後書き↓

久々に書いてみた。やっぱ好きだ、リボーン師匠…v

もう特権利用しまくってツナにベタベタすりゃいいぜ☆

早く続き書きたくてワクテカが止まんないwww

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