03/14の日記

18:43
この頃流行りのA-BoyJ
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結局いつもと様子が違う綱吉のことが気掛かりで後を尾けていた僕は、彼が見知らぬ男と落ち合いコンビニに入っていくのを目にした。

誰だ?あの目付きの悪い男は?一体どのように綱吉に知り合ったのだろうか?

訝りつつも車の陰に隠れて中を窺っていると近寄ってきた金髪の男が綱吉と先程の男に話し掛けるのが見えた。

と、突然笑ったその男が綱吉ともう一人の肩を抱いて歩き出すのを見て、怒りが沸々とわいてきた。

何だ、アイツは…?いちいち馴れ馴れしくはないか?

そうして肩を抱かれて、その他一人と共に引き擦られるように店を出て来た彼等から身を隠すように回り込み、引き続き観察を続けた。

会話からどうやら近くのファミリーレストランへ行くようだと分かり、歩き出す彼等の後ろに続いた。

今、ストーカーとか思った奴、居たら名乗り出なさい。

僕は綱吉が純粋に心配で監視しているだけです。誤解を招くようなことを言わないで下さい。

誰に聞かれている訳でもないのに、そんな言い訳じみたことを考えながら、僕もファミリーレストランの扉を潜った。

話し掛けてくる店員に「一名」と素っ気なく答えて、彼らが座った窓際の席の横を指定した。

こっそりとソファの陰から覗き見れば、三人はそれぞれにメニューを開きながら、和気藹々と話していた。

しばらく観察していて分かったことだが、あの二人の男は僕と同族…つまり世間一般にオタクと呼ばれる人種のようだ。

注文を聞きに来た店員にまたしても素っ気なく「コーヒー」とだけ告げて、僕は会話に耳をそばだてた。

「ハハ、お前らマジで萌えるなぁ…何つぅか、俺の思い描く攻めと受けのイメージにぴったりだぜ」

モデル顔負けな綺麗な顔をした男は、人の目を気にすることもなく惜し気もなくオタクを披露している。

隠れオタの僕には真似出来ないな、と一種の感心にも似た思いを覚えつつ、ジッと会話を見守る。

「はぁ?何言ってんだい?…と言うか貴方ってBLも描けたんだっけ?」

吊り目の男も堂々とそんなことを聞いている。

女三人寄れば姦しいと言うが、オタク三人寄れば逞しいんだな、なんて少し上手いこと考えてしまう僕は何なのだろう?

「ん?お前は読んだことねぇのか…俺、ショタ受けなら全然ソッチも描けるぜ」

「…ふぅん……別にいいけど、僕と沢田綱吉をモデルにして、余りいかがわしい物描かないでね?」

肖像権で訴えるよ、と不機嫌に言いつつも吊り目の彼の頬は僅かに朱を帯びている。

これはギャルゲーで言うところの所謂“フラグが立った”状態である。

別にフラグ成立が彼と向かい合うように座っている金髪の男ならば一向に構わないのだが、彼が先程からチラチラと照れ臭そうに窺っている先に綱吉が居ることが問題だ。

ちょ、綱吉を変な目で見るんじゃない!

心の中で叫んでいたとき、調度コーヒーを持って来た店員は僕の修羅の如き形相に怯え、さっさとカップを置くと会釈もそこそこに奥に引っ込んでしまう。

だが今はそんな些細なことはどうでもいい。何より優先されるべきは綱吉の身の安全だ。

僕が射殺しそうな眼差しで睨むのにも気付かず、吊り目の男はようやく運ばれて来たハンバーグを…朝からハンバーグ?まぁ、それはこの際どうでもいい。

ともかく暢気にナイフとフォークを使って料理を食している男は、ふと顔を上げて綱吉を見た。

「そうだ、沢田綱吉。この後、暇なら一緒にカラオケ行かない?共通の趣味を持つ友人ってのが僕には居なくてね、君と歌えたら楽しいと思うんだけど…」

そう怜悧な程整った顔に優しげな微笑など浮かべて綱吉を見ているではないか。マジで許すまじ!

グッと拳を固めた僕だが、長いスプーンを口にくわえたままキョトンとしている綱吉を目にした途端、怒りを押し退けて、何やら抗い難い感情がわいてきた。

ぱ、パフェって…しかもフルーツパフェって…か、可愛過ぎる…っ…!

これを萌えと言わずして何と言おう。可愛い子が可愛い物食べてるなんて、これ何て最終兵器?

混乱した頭で考えつつ、悶えてテーブルを殴る僕を、周りの客は何事かと見つめている。

そんな中、不意にあの忌ま忌ましいモデル顔の金髪が口を開いた。

「ツナ、頬っぺにクリーム付いてるぜ?」

「え?本当ですか?」

言いつつ紙ナフキンで口元を拭く綱吉だが、クリームが付いているのは反対側の頬だ。まぁ、可愛いからいいのだが…。

なんて暢気に考えていた僕は次の瞬間、余りの衝撃に一瞬我を忘れた。

「そこじゃねぇよ。…ったく、しゃあねぇな…」

クスリと笑った金髪がテーブル越しに手を伸ばし、綱吉の頬を指先で拭った。それだけで怒髪天を突きそうな僕に追い打ちを掛けるように、ソイツは何と指に付いたクリームをペロリと舐め取りやがったのだ。

「…甘ぇな…よくこんな物、パクパク食えるぜ」

苦笑する彼に綱吉はカァと顔を赤らめ俯いてしまう。

「でぃ、ディーノさんってば…」

何するんですか…と消え入りそうな声で言い、顔を両手で覆ってしまった彼を目にした途端、僕はテーブルにバンッと手を突き立ち上がっていた。

そしてツカツカとテーブルに近寄り、金髪野郎の顔に人差し指を突き付けてやった。

「何、いきなりベタなラブコメ展開やってるんですか!?一体、何なんですか、貴方!」

ガーッと声を張り上げた僕に、相手は困惑したように首を傾げた。

「…いや、お前こそ誰だよ?」

「黙りなさい!綱吉は友人からの大切な預かり物です、下手な手出ししたらぶっ殺しますからね!」

公衆の面前で物騒な言葉を吐く僕に、綱吉はオロオロと席を立ち、近寄って来た。

「む、骸さん…落ち着いて下さい。この人達は俺の友達なんです」

ギュ、と袖を握られて上目遣いに見上げられると、怒りが急速に萎んでいくのが分かった。

「そ、そうだったんですか…」

呟く僕に答えたのは、綱吉ではなく隣の吊り目の男だった。

「そうだよ。いきなり妙な勘違いして怒鳴らないでくれる?イイ恥さらしだよ…」

横柄に腕組みしながら言い捨てる彼に、少しイラッとするが、綱吉の手前我慢することにする。

それより、問題はこの金髪の方だ。

「…貴方、何者なんですか?」

ツナ、などと随分親しげな呼び方をする奴が気になって仕方なかった。

「ん?あぁ、俺はディーノ。お前の名前は?」

「六道骸です…って、そうではなく!貴方いちいち綱吉に馴れ馴れしいですよ!」

気安く触るな!僕ですら彼にはなかなか触れられないと言うのに…いや、これは妬みでは断じてない。

強いて言うならば怒りだ。

そんな怒り狂う僕を尻目に吊り目の男が綱吉に話し掛ける。

「ところで沢田綱吉、ボーカ○イドは知ってる?」

「はい、ボカ○ですよね?ヒバリさんも好きなんですか?」

「あぁ、ミ○は僕の嫁と言うかえんじぇうだね」

「ミ○かぁ…俺はカ○ト兄が好きです」

「へぇ、そうなんだ…」

「俺は断然ル○姉だな。あの色っぽい高音が堪らねぇぜ」

訳の分からない話を始める綱吉達に付いて行けず、僕は一人置いてけぼりな気分を味わったのだった。




続く

後書き↓

カラオケに行くフラグを立てたかった。ただそれだけ!キパッ

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