夢を見た。
それは悪夢と言って差し支えの無いものだったと思う。夢の中で南条はひどく脆くて大事な何かを抱えていた。硝子が割れるような音にはっとなって下を見れば、粉々になったそれがきらきらと光を反射していて。
夢から覚めた時南条は最悪の気分だった。何故それが壊れたのかは解らないが、その夢は南条にとって大事なものを失うのだという暗示にしか思えなかったからだ。

それから数ヵ月経ち夢の内容を忘れた頃に、それは起きた。南条は最初あの時壊れたそれが山岡だったのかと考えた。次にそれは日常だったのかとも考えた。どちらでもいい、壊されたそれの恨みを晴らすのも壊されないため守るのも、神取という目標があった。

神取に剣を突き立て内蔵を抉った時に、神取が口から血を吐き崩れ落ちるのを見た時に、唐突に南条はあの大切な何かが神取だったのだと理解した。
嗚呼、夢の中の南条は確かにそれを自らの意志で落として割っていた。
それを割ってしまった時どんな心境だったか南条には思い出せなかったが、それは今南条の中に渦巻くそれと違いないはずだった。





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