説
□夜桜を二人で
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花見の後片付けをして、部屋に戻った時には2時を過ぎた頃だった。
疲れているので、ベッドに仰向けに倒れてしまえば睡魔が襲ってくる。
ゆっくりと瞼が閉じようとしたそのとき、
トントンと軽いノックが聞こえた。
「何だよ、こんな夜中に…」
頭を掻きむしりながらドアを開けると、
そこには酒とつまみを抱えた砂白が立っていた。
「ごめんね。でも、朱星と二人でお花見したくて、それで…」
必死に言う砂白を見て、俺は少しホッとしたようにくすっと笑った。
「有難う」
砂白の暗かった表情がすぐに明るくなり、嬉しそうに尻尾を振った。
砂白の頭をくしゃりと撫でると、そうだと思い出して訊いた。
「なんだったら、俺の部屋で花見しないか?
実は結構この部屋から見える夜桜が綺麗なんだ」
砂白はそれを聞いて、ピンと尻尾を立てて目を輝かせた。
「いいの!?」
「どうぞ…って言っても、椅子ないけど」
苦笑混じりに言って、砂白を部屋に招き入れた。
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