長編1
□21〜42
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無事にチケットを購入し、水族館に入った智也と優紀。
オープンしたばかりの為か、それとも日曜日だからか、人の数が半端なく多かった。
「わっ!」
「ご、ごめんなさい…。」
「あ、いえ。大丈夫です。」
智也の歩く早さに合わせようと必死になっていた優紀は、何度か周りの人にぶつかったり、ぶつかられたりしていた。
「…大丈夫か?」
「あ、うん…。ごめん、遅くて。」
「…いや…。俺が気を遣うべきだった。」
智也は一瞬、視線を足元に向け、すぐに顔を上げた。
「ほら、」
「え?」
智也が優紀の視線の先に、右手を差し出す。
「手。」
「え、あ、うん。手、だね。」
「はぐれたら困るから。」
「え?」
智也の云いたい事がイマイチ分かってない優紀は、首を傾げる。
智也は云うのが恥ずかしかったのか、そのまま優紀の手を取り、歩き出した。
「あ、ちょっと、智也!」
「何だ?」
「ちょっと…勘違いされたら…」
「……お前だったら、俺はいい。」
「……!!」
智也のその言葉に、優紀は顔を真っ赤にし、何も云えなくなっていた。
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