水色のラヴソング
□二人の先輩
4ページ/5ページ
放課後。
部活が終わって、片付けや着替えを済ませて生徒会室の前へ行くと、またもや誰も来ていなかったようで、少し待つことにする。
そんなに待つことなく、夏菜や優紀が来て、一緒に行動していたのか、見慣れない子を見つけた。
一緒に入る新しい子なのだろうと思った瑞穂は、それ以上特に気にすることなく、招かれるまま生徒会室に入った。
それからお互いに自己紹介をした後、交流を深めようと話をしていた時。
仁美「あのっ、瑞穂先輩って、あの、噂の瑞穂先輩ですか!?」
瑞穂「???」
瑞穂はいきなりの仁美からの質問に、まったく意味が分からず、?を飛ばしていた。
夏菜「仁美ちゃん。瑞穂ちゃんが困ってるよ?どういう意味の噂になってるか教えてあげないと。」
瑞穂の様子を見て悟った夏菜が仁美をなだめるように云った。
優紀もそれには思いっきりうなづいている。
仁美「あっ、えっと、一年の間では有名なんですよ、瑞穂先輩って。
入学式の時に、新入生って胸にリボンを先輩たちに付けてもらうじゃないですか!
その時に、一番人気だったのが、瑞穂先輩なんですよ。
あたしは残念ながら別の先輩だったんですが、あたしの友達に、瑞穂先輩に付けてもらったって子がいて…。」
仁美は興奮したように早口に言いながら、その時の事を思い出しながら話している。
優紀「あぁ…、あれは確か、生徒会メンバー以外で部活の部長と副部長が担当してたやつか。」
夏菜「わたしたちは入学式の準備で手いっぱいだったから、そこまでは知らなかったなぁ。」
仁美「その時の瑞穂先輩がとってもカッコ良かったって聞きました!
あたしに話してくれた友だちは、一瞬で瑞穂先輩のファンになったって云ってましたよ!」
瑞穂はつい先週の事を思い出していた。
確かに入学式の時、中庭に集められていた新入生たちにリボンをつけていったことは覚えている。
しかし、仁美が云うようなカッコイイこと?は何もしていないはずだ。
仁美「なんでも、一人一人に言葉を贈りながら、頭を撫でてくれた、とか…。」
瑞穂「あぁ…。」
仁美のその言葉に、瑞穂ははっきりと思い出した。
瑞穂「別に……普通の事だと思うけど…。」
瑞穂はそれを特に気にもせずしていた。
むしろ、入学式で緊張している後輩たちに緊張をといてもらおうとやっていた行為なのだ。
嫌がられた風もしなかったから、自分が担当した後輩たちにはそうやってリボンを付けていったのだ。
仁美「でもでも、他の先輩はそういうサービスはしなかったようですよ?瑞穂先輩だけだったって話です。
ちゃんと、他の子たちにもリサーチしましたし!」
瑞穂「……。」
仁美「その子、本当に瑞穂先輩のファンになって、ファンクラブを作ろうかって考えてるみたいですよ?」
瑞穂「ファ…ファンクラブ!?」
さすがの瑞穂も驚きを隠せないでいた。
夏菜「わ〜、瑞穂ちゃんも人気あるもんねぇ…。そういえば、私のクラスにも、瑞穂ちゃんのファンの子、居たよ〜?
というか、瑞穂ちゃんが入学してからファンの子って結構いると思うな〜…。」
優紀「うんうん。あたしもよく聞く〜。やっぱり、剣道部の副主将っていうのもあるのかもね。
ほら、部活の部長や副部長って、部内の人気で決まっちゃうところもあるみたいだから。」
夏菜や優紀まで、そんなことを云いだして、瑞穂は本当に混乱していた。
今まで自分に人気、などというものがあるとは思っていなかったからだ。
ただの冴えない一般生徒。という位置づけだと思っていたのに。
仁美「そうです!瑞穂先輩のファンクラブってあるんですか!?夏菜様や会長様はご存じですか?あたしの友達が知りたがってたし、なかったらどうやって作るか調べて欲しいって云われました!」
夏菜「えーっと、私はちょっとその辺はまったく知らないなぁ…。自分のファンクラブがあったってことすら知らなかったし…。」
優紀「あたしも…。あ、そういえば、新聞部の…誰だったけ?二年でこういう学園内の噂とかに詳しい子がいたじゃない?
その子に聞いてみたら?何か知ってると思うけど。」
どんどん話が膨らんでいくなか、優紀の云わんとしている人物が自分のルームメイトだというのに思い至った瑞穂は、思わず、といった風に口にしていた。
瑞穂「その子なら、私のルームメイトです、たぶん。」
仁美「本当ですか!?じゃ、じゃあ、そのルームメイトさんに聞いてもらってもいいですか?
瑞穂先輩のファンクラブがあるかどうかって話を!!」
瑞穂「えっ…?」
仁美「お願いします!!」
瑞穂は、自分の失言に気付いたが、それはもう遅かった。
.