短編

□青空の夢
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「後藤(ごとう)!」

鼓膜を叩く声は、よく聞き慣れた声。


「…友紀(ともき)くん…。」

振り返れば、笑って手を振る少年。


「今帰りか?」
「うん、」
「じゃあ一緒に帰ろうぜ。」
「…うん。」

何がきっかけで、彼はそう云ったのか、わからない。

「でも友紀くんの家、反対方向じゃ…」

「まぁな。こっちに用があるからさ。」
「そうなんだ…。」


同じクラス。
しかも、中学の時から。
同じ高校を受験した事も知らなかったけど、だいたいの生徒は中学から一緒で、高校も家から近い場所がたまたま一緒だった。

高校も二年目に入り、まさかここまでクラスが一緒とは思いもしなかった。


もちろん、数人はそんな友達が居るけれど。

それでなのか、ちょくちょく話をするようになった。


「後藤、部活とかやってないのか?」

「うん。」

「やらないのか?」

「うーん…。一年の時なら入りやすかったけど、今からって、あんまり。」

特に興味を惹いた部活があったわけでもなく、何かの部活に所属しないといけないという決まりもない。

一年間を帰宅部で過ごしていたから、今から部活に入る、とかっていうのも考えてなかった。
「夏木(なつき)とか、桜井(さくらい)とかと一緒に入らなかったのか?
なんだっけ…?バレーだったか?
仲良いだろ。」


「うん。わたしは断ったの。
わたし、運動が得意ってわけでもないし…。」

この二人も、中学から同じクラスの、仲の良い友達。


「そうか?一年の時も、この前の球技大会でも活躍してたじゃん。
しかもバレーだったし。」

毎年、6月くらいにある行事で、球技大会がある。
この球技大会は、全校生徒の交流の場、もしくはクラスの団結力の向上を目的としていて、毎年種目はバレーらしい。


「たまたま、だよ。」

偶然、スパイクが何度か上手く決まったとか、それくらいのもの。
打てなくはないんだな、とか思いながら。




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