永久の時を君と
□忍び寄る影
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「……そう、取り逃がしちゃったんだ…。」
闇の中で、低く憂いを含んだ声が木霊する。
「…申し訳ありません…。しかし、今度こそは必ず…、」
闇に対する男は、唇をかみ締め、呟く。
「…いいよ、シン…。君はよくやったよ。…あの、『魔女』相手に…。だけど、少々甘すぎるんじゃないかな、君は。
『空白の魔女』は、僕らの天敵。最大にして、最強の敵。
彼女の力は、君が一番良く知っているものだと思っていたのだけど…それはどうやら間違いだったようだね。」
「そ、そんな事は…」
闇から出た若い男は、不敵な笑みを口元に浮かべていた。
「でもね、僕らは君が居なければ、外に出る事も叶わない…。こうして、直接話せるのは、君しかいない…。
『魔女』の情報を直接聞けるのは、君しか居ないんだ…。」
「は、それは分かっております。」
「………キラ、もういいよ。」
「アスカ…。」
闇の中から、声だけが男を制止する。
「シン、君は彼女を恨んでいるかい?」
闇の中の声は、目の前に居る男に問いかけた。
「……恨んでいる、ですか…?」
「あぁ…。彼女は君のすべてを奪って行った、『奴ら』の同胞。今は違うと云えども、君の脅威となっている。
君は、彼女をその手で抹殺したいと思うほど、彼女を恨んでいるかい?」
「………。」
逡巡するシンの様子を見て、闇の主は嗤う。
「今すぐに答えを出さなくてもいい…。僕らは、彼女の魂が必要なのだから。一番の脅威である彼女の魂を回収できれば、残りの二つも簡単に手に入る…。
しかし…、一番の脅威であるが故に、その魂の回収に手を煩わせている。それも現実…。」
「だけどアスカ、あまり悠長に構えているヒマはないよ?『魔女会』も着々と力を付けてきている…。
まぁ、昔に比べたらすぐにでも潰せるだろうけど…。」
「………あまり、奴らを軽く見るのはお勧めしないわ。」
ふと、三人以外の声が飛び込んでくる。
「…お前は…、リムリア!どうして此処に…?」
声に気付いたシンがその声の主の名を呼んだ。
「あたしも一応、幹部なんだけど?それとも、あたしが聞いちゃマズイ話でもしているわけ?」
リムリア、そう呼ばれた女は、オレンジの髪を二つに結び、不機嫌そうな顔でシンを睨んでいた。
「いや…、そういうわけじゃないが…。」
「じゃあ、貴方にとやかく云われる筋合いはないわ。」
リムリアは腕組をし、溜息をいた。
「それで、『魔女』の居場所は突き止められたの?」
「………恐らく、『傍観者』の所だ…。」
「ふぅん…。」
リムリアは髪を指先で弄び、つまらなさそうに呟く。
「リムリア、君に与えた任務はどうした?」
闇の主が、リムリアに問いかける。
「えぇ、もう終わったわ。その報告をしにきたの。」
リムリアは髪から手を放し、闇に身体を向けた。
「云われたとおり、全滅させた。あの国にはもう、生き物の生存は確認できないわ。」
リムリアは懐から茶色の封筒を取り出し、キラに手渡した。
「…さすが、『救済者』。君の力には毎度、毎度、感動するよ。」
封筒の中に入っていた無数の写真を見て、キラはそう呟いた。
「それはどうも。」
リムリアは対して心のこもっていない態度でそう返し、今度はシンに目を向けた。
「『傍観者』のテリトリーに居るって事は、確実な情報なのかしら?」
「98%の確率で、云い切れる。」
「そう…。」
「……少々、厄介な事になったね…。『傍観者』は、僕らに害になる結界を張っている…。強行突破しようとすれば…、命を落としかねない…。」
闇の声は、思案するように。
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