長編1

□第三部
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第一話   魂(こころ)在る場所



―――――
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―――



黒い雲が空を覆い、地上に雨を降らせた。


闇が付きまとう身体に、光を求める。



「………終わりだ…。」


ただ、彼女に逢いたい一心で。



「………修一(しゅういち)、」

後ろから、澄んだ声が聞こえて。

「…隊長…、」

振り返れば、優しく笑ってくれる上司。

「………よく…、やってくれた…。
お前と仁の二人に話がある…。
俺の部屋まで、後で来てくれるか?
後片付けは…他の奴に任せるから。」


「はい…わかりました。」


この戦いが始まってから隊長は、変わった。

いつも刺々しかった態度が、柔らかくなった。

相変わらず、口調とかは変わらないけど。


足元に転がる、異質の生き物。

死神界を脅かしていた奴ら。

そして、彼女の側を離れなければいけなくなった理由。



恨んでも仕方ない。

過ぎてしまった時間は、どうしようもない。

取り返せない。



ふとした時間に、彼女への気持ちを募らせる。


忘れたことなんて、一瞬だってない。


斬りつけてる間だって、彼女の声を、顔を忘れたことなんてない。


彼女の存在を、心に秘めて常に戦っていたから。

どうしようもない。

どうしようもない。

何故、こんな気持ちになるのか、わからない。


どれだけ、彼女に惹かれていたのか。


思い知らされる。






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