長編1

□Reason
2ページ/43ページ



プロローグ


この声が届くのならば、

君はきっと

失ったりしなかった


この手が届いたならば、

世界はきっと

繋がれていた


明日を見る事さえも
僕には難しい事で

人を信じる事さえも
僕には時間のかかる事で

何時まで経っても僕は、
成長できないままで

今生きている事
今夢見ている事
今時が過ぎている事

総てが誰かに仕組まれた事のようで
総てが誰かの思いのままのようで
怖いんだ。

怖くて、
震える身体を止められない。

暗闇の中に僕はただ独り座り込んで
煌々と輝く月を怨めしく見上げているんだ

孤独には
慣れたんだ

独りで生きる事にも
慣れたんだ

こんなにも汚れた世界にも
慣れたんだ

汚れた世界に
何の光も導き出せなくて
もがき苦しんで

また独り
膝を抱えているんだ

舞い降りた蝶
僕の指先に止まり
羽根をはためかせる

傷だらけの月に照らされた蝶
僕の心に入り込み、
僕を包み込んでいく

闇の中へ逝くのなら
光など持たない方がいい

闇の中へ逝くのなら
心は捨てて逝け

闇の中へ逝くのなら
己しか信じてはいけない

進むしかないんだ
僕は、
誰にも頼れないから、
独りで進む

取り戻すのは
闇の中に佇む光…






.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ