長編1

□夢に堕ちた蝶
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夏木蘭の仕事。
それは、悪霊や悪魔といった、『人ならざるモノ』を排除する仕事。『対魔師』と名を知られている。

彼女は夢を渡り、人々の夢の中に生息する“魔”を主に依頼を受けている。
人の夢に生息する“魔”は、時に現実へと姿を現すこともある。

“魔”は人の夢から出ると、力が倍増するため、一般の対魔師ではとてもではないが抑えて退治するのは容易ではない。
その為に、“夢渡り”が可能な夏木蘭にしか、夢の中で“魔”を退治することは不可能なのだ。

「でもよ、何でお前は人の夢に入れるんだ?わけわかんねぇ。」

慎二は心底不思議そうに吐き出した。

「まぁ…そうだな。常識で考えれば、無理だな。しかし、私のその能力には常識がない。何故かは、私にも説明はできないよ。
こんな力など、欲しくて持ってる訳じゃないしな。お前が羨ましいよ、まったく。」

蘭はため息と共に紫煙を吐き出し、目の前に座る慎二を見た。

「お前が夢の中に行ってる間、俺は何も出来ないんだぜ?つまんねぇよ、そんなの。それより、現実に出てきてくれたら俺にもやる事があるってもんだ。」

不貞腐れたように慎二は返す。

「現実に出た時の奴等の凶暴さを知ってるだろう?それだけではなく、一般人が巻き込まれる可能性も出てくる。依頼を完璧にこなすためには、その退屈も必要なんだよ。」
「ちぇっ、」

蘭の言葉に慎二はいっそう不貞腐れた。










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