中編

□クランベリーチョコレート
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クランベリーチョコレート

第1話  再会



あの頃ほのかに抱いていた恋心は、本物だったのだろうか。
幼い子供の頃の感情など、あてにならないものなどない。
あの頃より成長した今では、どうだろうか?
毎日のように自問自答してみても、その答えはわからないまま。
だだっ広い空を見上げてみても、何も得られはしないのに。

「どうした?空なんか見上げて。」

「え?」

「マジでどうしたんだよ。」

「別に…暇してただけだよ。」

「じゃあ、どっか飯でも行かね?」

「おう。」

他愛のない会話。
大した刺激のない毎日。
あの頃と何が変わったんだろう。
ただ、図体だけがデカくなっただけな気がする。

「そういやお前、法学部の彼女はどうしたよ?」

「別れた。」

「はぁ!?別れたってお前、まだ付き合って2ヶ月とかだったろ!?」

「まぁ…それくらいだったけな。」

「やけにあっさりだな…。なんでこうも長続きしないんだよ、お前は…。
法学部の彼女、めっちゃ美人だったのに。」

「そうだな。」

恋人ができても3ヶ月以上続かない。
理由がわかれば対処のしようもあるかもしれないが、その理由を探すことすらしていない。
いつも向こうから声をかけてきて、断る理由がないから付き合う。
そこに相手に対する愛情がないから、深く知りたいとも思えない。
そして、向こうから別れを告げられてもそれをすんなりと受け入れる。
ある意味、作業のような感じだった。
恋人としている時はもちろん、楽しい時間もある。
ただ、楽しい以上の感情が生まれないのだ。

「もしかしてまだ…、引きずってるのか?あいつのこと。」

「引きずってるも何も…何もなかったからな、俺たち。」

「何もなかったはないだろ。お前、好きだったんだろ?香坂のこと。」

「…………。」


好きだった、ではなく、今も。
今も彼女のことが好きだ。
だから恋人ができても、好きという感情が生まれないんだ。
彼女以上に好きになれる人が現れないから。

十年前。
当時小学生だった俺たちは、ただのクラスメートでしかなかった。





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