中編

□夢見た後で
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「真っ白な世界に君は居て、僕は白に染まる君を見ていた。」



まるで、詩のような。

まるで、歌のような。



暖かい言葉。



「………晴花(はるか)?」


「ん?」

「あんた、大丈夫?」

「うん、大丈夫。」

「そう?」

「うん、そう。」


柔らかい風。

冬の匂い。


浴びる太陽の光。


包み込まれる、清々しい気持ち。


「…晴花ってさ、やっぱり不思議ちゃんだよね。」

「なんでよ、」

「まるっきりそうじゃん。
これは誰もが見た目で騙されるわけだわ。」

朝の教室。
周りが煩い中、よく通る声が云う。


「見た目で騙されるって…どういう意味?」

聞き返す。

「自覚してないところがまた、腹立たしいわね。

……あんた、顔も、頭も問題ないのよ。むしろ、上出来なわけ。
なのに、性格がね…。」

誉めてるんだか、けなされているんだか。

「性格って……一番最悪なパターンじゃん。」

自分では、そんな性格悪いつもりはない。
みんなそう思ってるに違いない。

だけど、実際には他人からどう思われてるか、が問題。

「…嫌な性格ってわけじゃないの。
ただ、常人には理解しがたい行動を時たまとるってところ。」

「そこまで毛嫌いすること?」

「そんなんじゃないの。初めて逢った人とか、あまり接点がない人とかはびっくりするってことよ。
まぁ晴花が普通になっちゃったら、何も面白くないんだけどね。」

「それ、私が悪いってわけじゃないでしょ。
性格は変えがたいものでしょ?簡単に変えられたら苦労しないよ。」


生きていた年月の分だけ、積み重なって現れるものだから、急に変えられるものじゃない。


それは当たり前の話。


「でも、変わる子も居るでしょ?
付き合う男が変わったら、性格とか、ファッションまで変わる子とか。」


「そんなの、『自分』が無いだけ。
『自分』って云う、揺るぎないものが無いだけ。確立できてないだけでしょ。
私はそんなことないよ。

誰かの色に染まりたがるのが悪いこと、とはっきり云うつもりはないけど、『自分の色』がないといつかその子の存在は他人の中からなくなるよ?
その子だけの、その子の個性がないと、誰かに依存する。

私はそれが嫌だから。」


染まることが嫌なわけじゃない。
『自分』がなくなることが嫌なんだ。




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