中編

□君に伝えたい言葉
2ページ/9ページ





第一話 幼馴染





いつも気付けば、側に居た。


近くにあり過ぎて、見えないものは、いくらでもある。


そう、当たり前のように共に過ぎている、この時間でさえも。

当たり前でいて、でも本当は、当たり前じゃない・


それは、必然。



「…どうしたの?」

「いや…。」

「最近、ぼーっとしてる事、多いよね。そんなに僕の話、つまらない?」

「いや、そんなことない。」

「………そうかな。」

「そうだよ、」

「…それならいいの。でも…、僕の目にはそう映ってる。」

「…じゃあ、やっぱりそんなことないな。」

「それ、どういう意味…、」

ふくれっ面をする幼馴染の顔を、いつもより見つめてしまう自分がいた。

「…なんでもいいじゃねぇか。」

「よくないよ。僕にとっては重大なの。」

「なんだそれ。それこそ、どうでもいいじゃないか。」

「どうでもいいこと、話してたわけじゃないんだけどなぁ…。てか、質問に答えてよ。」

「は?質問?」

「うん、さっき、聞いた。その答え。」

「……質問すら、聞いた覚えがないんだけど。」

「…やっぱり。君のことだから、そう云うと思ってたよ。安心して。」

「安心する意味がわかんねぇ。」

「……なんか今日は、ツッコミが鋭いね。」

「お前が鈍いだけだろ。」

「そんな事ない。僕はマイペース人間だから、自分が中心なの。」

「それ、ただの自己中心的に世界を考えてるだけじゃないのか。」

「人はみんな、そんなものよ。自分が可愛いんだから。」

「開き直るな。」

「君の前じゃなきゃ、開き直ることもできないんだから、いいじゃない。」


こうした軽い口げんかみたいなのは毎日。

「………ねぇ、君はさぁ…、僕のこと、好き?」


視線は前に向けたままで、そんな大事なことを聞く。

「…好きだぜ、友達だろ?」

好きでもない奴と、トモダチになんてなれない。

なりえない。

幼馴染は、トモダチと違うかもしれないけど。


「そっか…。ありがと。」

「なんで礼を云うんだ。」

「なんとなく。僕を好きでありがと。」



その時、どうしてそんなに哀しそうな、寂しそうな顔をして云ったのか、わからない。



「帰ろう。」

大きく伸びをするお前の横顔は、見ていて不安にさせた。











次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ