中編
□雨の記憶
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「別れよう。」
雨の中、一年付き合っていた彼から云われた一言。
わかっていた。
こうなること。
「うん…。そうしようか。」
もう、お互いに心がないこと、気付いてた。
付き合い始めた頃の淡いドキドキも、なくなってた。
「…だけど…、理由を…聞かせて欲しいな。……はっきり、云って欲しいな。」
ムダにオブラートに包まれても、傷を深くするだけだから。
それならもういっそのこと、率直に云って欲しい。
それを、受け止めるから。
「…………他に、好きな奴ができたんだ。」
うん、そう…。
「…どんな子?」
「……同じ学校で…、何か、見てたらほっとけない奴で…。」
「そ…そっか…。うん。じゃあ…その子と、幸せに、ね…?」
「知佳(ちか)…。」
「あつくん、私は大丈夫。悲しくなんか…無いから。
大丈夫、わかってたの、本当は、ずっと前から。
あつくんが云わなきゃ、私から云おうと思ってたから。」
今の私、笑えてる?
うまく、笑えてる?
ねぇ、神様。
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