長編Book

□なぁ、こっち向いて。
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キラを一緒に追っていたが、俺は監視で見落とした部分があった。
メロは電話ではグチグチ言わなかったが、実際に会ってみると、これがなかなかご立腹な様で……





「……、」


ソファで向かい合いつつも、互いは無言で、重たい空気が部屋の中に充満している。


「…メロ、ごめんってば。」

「…。」


お気に入りのチョコレートを噛み砕きながらもメロは俺に視線を合わせてくれない。


「メーロ、メロメロメロー…」

「うるせえ!」

「あぅ…」


試しにとメロの名前を連呼したもの、逆効果だったらしい…
俺はメロに安い灰皿を投げ付けられて、額に命中して、間抜けな声と共に後ろにのけ反って暫く静止…。

安い灰皿だったとは言え、額から走った痛みは激痛と言っても過言では無く、簡単に俺を涙目にした。


「痛た…!ごめんってば、なんでもするからさ…」


しかし結局悪いのは俺なので、また情けなく謝りながら静かに立ち上がり、メロの隣に腰を降ろした。
メロはちらっとこちらを見て、小さく舌打ちしては直ぐに顔を背けた。


「ごめん、なさい。メロ、俺頑張るから。もうミスなんてしないよ。」

…メロは全くこちらへ向いてくれなくて、俺はメロの方へと詰め寄った。
ギシリ、とソファが軋んで、メロはまた舌打ちをして。


「メロ、ごめんってば。」


次は静かにメロの首筋に手を伸ばそうとしたが、呆気なく振り払われてしまった。


「………許してなんか言わないよ、」

振り払われた手はそのままにして、俺はメロを見つめながら口を開く。
メロの呼吸の音が聞こえた、気がした。


「こっち向いてよ。」


俺はメロに無視されるのが辛かった。憎まれたり、怒られたりするより辛かった。
メロはパキン、と軽い音を立ててチョコレートを噛んだので、粉がポロリと落ちた。



「……無視しないでよ。ごめん。許しては言わないけど、なぁ、こっち向いてよ。」



メロは溜め息を吐いて、呆れ顔でこちらへと振り返った。


「…怒ってる?」

「…まぁな」

「でも俺は今ちょっと嬉しい」

「なんでだ」

「メロが、」















■こっち向いてくれたから!









(これでキスできると思って調子に乗ってキスしたら怒られた。)

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