帳中

□無題
1ページ/2ページ




 目の前へ白く長い腕が伸ばされ、磨かれた爪が色薄い唇をいらう。
 その意味は知っている。
 軽く舌先で触れ、ぱくりと含んでやれば、見下ろす“主”が満足そうに笑った。
「いい子だ……そう…よく舐めろよ…?」
「ん…」
 もう一本、指がもぐりこむ。
 舌で包むように舐めていると、時折、からかうように爪が舌をくすぐった。
 そのまま引き抜かれた二本の指は、唾液の糸を引いて濡れている。
「これも口淫と呼ぶのかな」
「さて、な…」
「ふん…可愛げのない…」
「いつものことだ」
 他愛ない会話を交わしながら、濡れた指が後庭をまさぐる。
 軽く指先を埋めたかと思えば、一気に挿し込まれた。
「っ……」
 擦れるような感覚に思わず息を呑むが、長い指は構わずに動き始める。
「なんだ、もう痛むのか。…先ほどまで、泣くほど善がって咥えていたくせに…なぁ…?」
「っ…うるさい……」
「そのような物言い、私以外にはするなよ?」
 二つの指が好き勝手に粘膜を犯していく。
 一方は秘所を執拗に弄い、一方はより奥を押し開く。
 触れられるたびに、白い体がなまめかしく蠢き、ひきつる。
「っぁ…あ……あぁ…」
 もう何度目か知らぬ、しかし、とどめようもない愉悦。
 ぞろりと這いずるような熱さが下肢を伝う。
先ほどまでの情交で放たれた精液だと、蕩けていく頭の片隅で理解した。
「……ほら、聞こえるか?」
 掻き出される精の残骸が、べちゃべちゃとだらしなく、後庭を潤してはこぼれていく。
「や…っ…やめ…っ…!」
 拒もうとした言葉が、秘所を押し潰される快美感に途切れた。
 同時に、噛み付くような愛撫が、喉から胸へ次々と落とされる。
 時に紅く歯型を残し、痣が咲いていく。
 その痕を、たっぷりと唾液を乗せた舌が優しく這い回った。
「痛…っ…!やめ…ろ…っあ…っ!」
 熱い快楽と、じわりと滲む疼き。
 紅く熟れた胸元に吸い付けば、細い悲鳴とともに身悶えた。
「も…っ…無理…、もう……ぃ…ッ」
「悦いか…?そんなに…?」
 にんまりと目を細めながら、荒い息を吐く唇をふさいでやる。
 もとより、答えなど気にしない。

 淫楽に溶けた思考が理性をつむごうと、何ほどの面白さがあるものか。
 この男は存外、快楽に弱い。
 溺れるほどの悦びを与えてやり、喘ぎすすり泣く声を聞くほうが、よほど素晴らしい。



次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ