帳中

□浮沈の夢
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肌を隠しもせず、ただ、余韻と夢の間をたゆたっている。
それでも眠りへ落ちることができないのは、吐き出されぬまま終わった精液が、自身へ疼くように微かな熱を伝えるから。

下肢はまだ温かく、その奧には大好きな兄の体液が、大切に閉じ込められている。

とろりと蕩けた瞳が、蒼黒い虚空をぼんやりさまよっていたが、ふと、身を起こした。


弟の起きる気配を察して、隣室から曹丕が顔を覗かせる。
曹植が、ぼんやりと寝台へ起き上がっていた。

「どうした」

「ねえ…兄様…」

月明かりを背にした両脚は、痛々しいほど白い。

「兄様の子が欲しい…」

どこか霞がかかったような瞳で呟く弟に
「無理だな」
曹丕の答えはにべもない。
だが、曹植には聞こえているのかどうか。
「欲しい…生みたい…」

白い白い脚が、ためらいなく開かれた。

「どうして、私には胎がないんだろう…」
「男だからに決まっていよう」
「兄様に精を注いでもらっても、少しも育たない…」

くすっ、と弟は笑う。
その微笑みは、どこかいとけなく、弟の外見にそぐわないようで、曹丕は不快な気持ちになった。

それなのに
その手は弟の細い肩をつかみ、寝台へ引き倒す。


「ねぇ…兄様…来て…」

敷き布へ沈みながら、弟が手を伸ばす。

「もっとたくさん、抱いて…」

腰を絡め取られる感覚。
憑かれたような誘惑が耳元を犯す。

「たくさん突いて、もっと奥に出して……そうすれば、次はきっと―」



――きっと兄様の子を産める



これが夢なのか。
それとも現なのか。

それは二人にさえ判らない。









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